このときの売り上げは2億円弱。増収傾向にはあったものの、資金難に陥っていた。その原因は何だったのだろう。

サバ料理専門店を倒産危機から救ったクラウドファンディングPhoto by H.H

右田社長は「そもそも、サバに特化したビジネス自体に無理があったんです」と答える。鯖やでは、サバ寿司以外の商品を一切作らなかったため、工場の稼働率は低く、従業員の生産性も在庫の回転率もきわめて低かった。非効率で利益の少ないビジネスモデルで、商品力とPR力でなんとか乗り越えられてきたというのが実態だったのだ。

「しかし、創業7年目を迎えて限界がきてしまった」

 資金繰りの問題以外に右田社長を悩ませたのは、人の問題だった。この頃、採用から教育まですべて右田社長がやっていたため、自分の考えや思いが従業員に伝わらないもどかしさから、ワンマンな経営に陥っていた。しかも、労働条件も待遇もなかなか改善できず、若くて優秀な従業員は次々と辞めていったという。

 「そんな状況だったので、副社長でもある双子の弟からは『お前が人事をすると現場が混乱するから、これからはサバだけを見てくれ。社内のことに関しては俺が面倒を見るから』と言われました。結局、当時の自分は外面ばかりで、社内を見る余裕がなかったんです」

 2012~13年、まさに“天国と地獄”を見た右田社長は、後に救世主となるある人物に相談する。豊中商工会議所で経営指導員をしている、地域活性化担当課長の吉田哲平氏だ。かねてより経営相談に乗ってもらっていた吉田氏に、経営が厳しいことを打ち明けると「うそでしょ。豊中を代表する企業になったのになんで?」と驚かれたという。

 その後、吉田氏から国の補助事業である日本政策金融公庫のベンチャー向け融資制度を活用できるよう融資担当者を紹介され、4000万円を借り入れることができた。同時に、新たな資金調達方法としてクラウドファンディングも勧められた。

 その翌月からアンテナショップを出店するためのファンドをスタート。右田社長は「一番苦しかったとき、税理士に提案されるままリスケをしていたら融資もクラウドファンディングも不可能でした。あのときの自分の判断は正しかったし、鯖やを世の中に必要な会社と判断し、尽力してくれた人たちのおかげ。これもサバがつないだ縁だと思う」と振り返る。