また、NHKスペシャル「発達障害~解明される未知の世界~」(2017年5月21日放送) のホームページには、「生まれつき、独特の『世界の見え方・聞こえ方』をしているケースが多いことがわかってきた」とあります。

 私もこのNHKの番組を観ましたが、健常者には何の変哲もなく見えているものが、とても眩しく見えたり、ストレスなく聴き取れる人の話し声が、多くの雑音に紛れて聴き取ることが困難だそうで、発達障害の人の見え方、聞こえ方を映像と音声で再現しています。

 おそらくAさんの「目を見て、話すことができません。辛いです」もこれだったのでしょう。他にも、私と電話で話をした時もそうだったように、口頭で話を上手く伝えられないなどということもあるでしょう。それが原因となって、職場内で「言った言わない」「聞いた聞かない」などの、トラブルが発生することも想像できます。

 こうした特性について知識のないB課長は、「話をする時に相手の目を見るのは、社会人のマナーの基本」と、普通なら当然の指導をしました。しかしAさんにとって、その指導は耐え難いものだったということです。

 ちなみに、Aさんに「私とのやりとりは、電話とメールのどちらがよいですか?」と質問したところ、Aさんは「メールの方がよい」と答えました。Aさんの場合、会話よりも文字の方がコミュニケーションがとりやすい、ということでしょう。

 最近、このような、発達障害の傾向を感じさせる相談が増えています。被害を訴える人に、あるいは、加害者とされる人に発達障害が疑われる、というケースです。

 そして、B課長のような立場からすると、お互いの意思疎通が上手くいかないのは、コミュニケーション不足が原因とばかりに、従来と同じ手法でコミュニケーションをより多くとろうとする方向に進みます。Aさんのような人にとっては今までだってコミュニケーションに苦痛を伴っていたのに、それがさらに多くなるのですから、耐え難いものになり、ハラスメントという訴えに至ってしまいます。

コミュニケーションが上手くいかなければ
相手に合わせて方法を変えてみる

「コミュニケーションが上手くいかないのは、それが不足しているのではなく、コミュニケーションの方法が合っていないのだ」と私は考えます。ですから、コミュニケーションの方法を相手に合わせて柔軟に変えてみる、そこに、このようなハラスメント被害をなくしていくヒントがあると思います。