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任天堂はなぜ「ニンテンドー3DS」を値下げしたか

石島照代 [ジャーナリスト]
【第22回】 2011年8月18日
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サードパーティに発売日の主役は荷が重すぎた?
そして強調される年末商戦期の重要性

 一方で、3DSが不評だったのは、初期価格ではなくソフトラインナップ編成を上げる声も根強い。ゲームソフト評論でも定評のある、井上明人GLOGOM研究員は「早期購入者に3DSが不評な理由は、単に値下げがあまりに早く感じられたというのはあるわけですが、それだけでなく『まだ何も遊んでいないうちに値下げをされてしまった』という印象があります。震災からの4か月半の間で、3DSで『ゼルダの伝説時のオカリナ3D』、『レイトン教授と奇跡の仮面』、『ニンテンドッグス プラス キャッツ』がそれぞれ国内で30万本前後ほど売れているというぐらいで、これといってやりこんだゲームがある人は少ないことも原因では」と指摘する。

 小山准教授も「3DSに関しては、ロンチタイトルですら3D機能を使いこなしたタイトルがないことがとても気になります。DSもタッチペンはほとんど使われなくなりましたが、初期は脳トレのようにタッチペンならではのタイトルが存在しました。3DSにそういったタイトルが無い以上、値下げでDSの買い換え需要を狙うしかないのかもしれません」と同じようにソフト編成に疑問を呈している。

 確かに任天堂は過去、新規ハード発売時には同社の人気タイトルを同時に発売していた。たとえば、DSであれば「スーパーマリオ64DS」や「さわるメイドインワリオ」である。この二本は発売後6週間以内でそれぞれ123万本、49万本をワールドワイドで売り上げている(VGChartz調べ)。

 一方、岩田社長は3DSの発売に当たって、他ソフトメーカーにもビジネスチャンスを分けるべく、3DSと同時発売ソフトには他メーカーのものを中心に編成を組んだ(本連載第5回参照)。この経営判断が誤っていたとする声はネット上を中心によく聞かれるが、対ソフトメーカー施策の視点からすると責めるのは少々酷であろう。

 ただし、2004年のDSの発売時と異なるのは、人気自社ソフトの同時発売の有無だけではない。DSの発売は年末商戦時だったが、3DSは2月である。つまり、この二本のソフトのヒットも年末商戦期であったからこそ達成できたということもできる。この事実だけでも、年末商戦期の重要性は理解できるだろう。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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