日本最大の地方銀行である横浜銀行。神奈川県に本店を持つこの銀行に、2016年6月、初めてとなる生え抜き頭取が誕生した。大蔵省(現財務省)の出身者が代々務めてきた頭取の地位が生え抜きに代わったことで、どのような変革をもたらしたのか。川村健一頭取に話を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)
──横浜銀行で初めての生え抜き頭取に就任してから、1年が経過しました。これまでに、どのような改革に取り組まれましたか。
この1年間で、生え抜き頭取のあるべき姿を示そうと試みました。これまで当行は、大蔵省(現財務省)など銀行ではない外部組織から頭取を招聘してきました。それ故、今までの頭取は、マクロな経済環境について話すことはできても、製品や海外取引について個々のお客さまと話すといったことは、大蔵省時代に経験していません。
そこで、過去にそうした経験を積んできた生え抜き頭取として、1年間で250~260社ほどの地元企業を訪問し、お客さまの事情に踏み込んだ話をすることに力を注いできました。
また、地元市民の皆さまとの距離を縮めるため、お祭りや花火大会といった地域行事に積極的に参加しました。節分の豆まき行事は、他の地方銀行はどこも参加しているようですが、当行はそうではなかったのです。今年は、私も裃(かみしも)を身に着けて、鎌倉市の鶴岡八幡宮で豆まきをしてきました。
一方、銀行内部に向けた取り組みで重点を置いたのは、職員との一体化です。「頭取になったら遠い存在になった」と職員に思われないように、例えば、休日セミナーで講師をやる時間をもらい、中堅や若手職員に横浜銀行の歴史を講義しました。