だが、安倍政権の選挙戦の特徴は、「アベノミクス」の成果のみをひたすら強調し、政治が取り組むべきさまざまな重要な課題について、ほとんど何も語らないことであった。世論が割れがちな憲法改正や外交・安全保障、原発政策などにについて徹底して言及を避けたのである。安倍首相はとりあえず景気さえよくなれば、重要争点はどうでもいいじゃないかという「究極のポピュリズム選挙」を行い、国民はそれを容認して圧倒的多数を与え続けたのである(2014.11.19付)。

 安倍政権は選挙に勝利すると、手のひらを返して経済だけではなく、全ての政策について「国民の信任を受けた」と宣言した。そして、「国家安全保障会議(日本版NSC)」設置、「特定秘密保護法」「安全保障法制」を次々と国会通過させていった。それでも国民は、選挙で安倍政権を勝たせ続けたのである。

国民が政治家の信頼を取り戻すことが
日本政治再生の第一歩となる

 結局、共謀罪など「やりたい政策」を強行採決で実現しても、森友学園・加計学園問題のようなスキャンダルが起ころうとも、閣僚や自民党議員の失言・暴言が立て続けに起きようとも、国民は経済にしか関心がない。バラマキをしておけば支持してくれる。国会では野党の批判にまともに答えず、適当に逃げていれば、国民はそのうち忘れてくれる。このような甘い考えが、現在の安倍政権の大失速を招いたといえる。

 だが、安倍政権が甘い考えを抱いたのは、「どうせ政策をまじめに論じても国民は関心を持たない」「バラマキをしていれば、なにをしても支持率は落ちない」という「国民不信」が高まっていたからではないか。

 政治家に対して不信感を持つのは結構なことだが、国民も政治家から「信頼」されていないことも自覚すべきである。そろそろ国民の側も、政治の現実的な政策論争をしっかり評価できるようにならねばならない。それが、「カオス」としか言いようがない状況に陥っている日本政治を再生する第一歩であるはずだ。

(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)