気になるのは、今後の安倍政権に対するメディアの対応です。前回の記事で書いたように、一部メディアが加計学園問題で厳しい報道を続けた背景が憲法改正反対ならば、この秋からその憲法改正の議論が動き出すと、加計学園問題と同様かそれ以上に厳しい報道が行われる可能性が高いはずです。

 その一方、たとえば先週開催された予算員会の閉会中審査では、確かに安倍首相は丁寧に答弁していましたが、元総理秘書官が「記憶にない」と答弁したり、安倍首相の答弁に必ずしも説得的でない部分もあったりしました。それらを考えると、閉会中審査に向けて政権が“敵意あるメディア”の存在を前提とし、それでも国民に説得的に説明できるほどコミュニケーション能力を高められたとは言えません。

内閣改造とコミュニケーション
能力の向上は別問題

 そして、当然ながら、内閣改造をしても政権のコミュニケーション能力が上昇するわけではないことを考えると、この秋から憲法改正の議論を本格化するなかで、5~7月に行なわれたような一部メディアによる厳しい批判が再燃し、支持率の大幅上昇も憲法改正もかなり苦戦することになる可能性が高いのではないでしょうか。

 ちなみに、だからと言って私はそういう厳しい報道、右寄りの人に言わせると偏向報道をするメディアの存在を否定する気はありません。“敵意あるメディア”は、言い換えれば“主義主張がはっきりしたメディア”なので、多様な意見や価値観の提示という観点からは必要です。

 何より、そういうメディアもすでに存在する以上、「正しい報道をしない」と全面否定しても意味がありません。何が正しいか自体が、個々の価値観によって異なるのは当然なのですから。

 逆に言えば、そういうメディアが存在する中でも国民に説得的な説明を届けられなかったら、それができなかった方の負けなのです。その意味では、内閣改造で内閣のメンツを変えることも当然必要だったと思いますが、それだけで満足せず、政権としてのコミュニケーション能力をどれだけ向上できるかが、これから問われるのではないでしょうか。

(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸 博幸)