北朝鮮については、今後何が起きるかわからない。だから、軍事衝突の可能性などを予測することはここではしない。しかし、事態がハードランディングに至った場合には、日本経済ないしは世界経済は思いもよらない状況に陥ることになる。その準備ができているのかを今日は議論してみたい。

 私はこれまでの人生において、10年に一度のペースで「安定していた日々が突如暗転する経験」を味わってきた。20代でバブル崩壊、30代で山一や拓銀をはじめとする「潰れない」と思われてきた大企業の破綻劇、そして40代でリーマンショック。ビジネスパーソンではなかったが10代では、オイルショックというのも体験している。「世の中が安定してきたな」と安心し切っているときに限って、10年ごとにとてつもないサプライズが経済を揺るがすのだ。

 そうしてショックが起きてみると、「前から備えておけばよかったな」と思うことに多々気づく。個人の「あるある話」で言えば、「株を高値で手放しておけばよかった」というものがある。ショックが起きて株や不動産価格が暴落した後で、必ずそう思う。企業経営で言えば、「採用をし過ぎた」「設備投資をなぜかこのタイミングでしてしまった」といったことが、後から後悔のタネになる。

リーマンショックだって
1年前から前兆ははっきりあった

 前述した過去のショックはそれぞれ別物なのだが、共通点が2つある。1つは突然、世界全体がどん底に叩き落とされること。そしてもう1つは、その前兆が後から考えると比較的はっきり認識できていたことだ。

 記憶に新しいリーマンショックを思い出していただきたい。ある日突然、アメリカ政府がリーマン・ブラザーズを救済しないことがわかり、その破綻とともに世界経済が終わりを迎えるかのような混乱に陥った。あの日までは、「とはいえ、最後はアメリカ政府が手を差し伸べるから、最悪の事態は起きないだろう」と思っていたら、そうはならなかったのだ。

 一方で、リーマンショックを引き起こした原因、つまり証券化のリスクが世界中の金融商品に蔓延し、いつそれが火を噴くかわからないという状況は、1年以上前から、我々経済の専門家の間では周知されていた。そして何度も「警告」が発せられ「危機の予兆」が起きていた。

 自慢話ではないが、40代で経験したリーマンショックの際に、私は1年以上前から対策を立てていた。「いよいよ3回目のショックが起きそうだ」という強い不安を感じたのと、経営者として自分の会社を率いていた責任感も強かったからだ。