また、別の家庭では、寝ころんで夫がテレビばかりを見ている姿が我慢ならないと言っている妻がいた。何かと干渉されることがあり、自分に対して威張ることもあるが、「いちいち腹を立てているとこちらがシンドイので、作業と割り切って面倒を見ている」と語っていた。彼女の子どもたちは、夫が日曜日の朝から晩までどういうテレビ番組を見るかはすべてわかっているそうだ。

「家庭内管理職」になってしまう

 妻にあれこれ文句を言ったり、家の中でテレビを占領して無気力になってしまうだけではなく、定年退職になっても家で管理職のようにふるまう男性もいる。

「40代の会社員男性。同居する父が、管理職だった有名企業を数年前に退職後、家でも管理職のように振る舞い、困っています」という出だしで始まる相談内容は、読売新聞の「人生案内」に掲載されたものだ。

 息子である相談者によると、ワンマンタイプで、家の重要事項も誰にも相談せずに勝手に決める。意見など言おうものなら、いつまでもネチネチと嫌味を言う。現役の時には興味のなかった家事にも口を出し、折り込み広告を見て「これが安い、食いたい」と主張して夕食にないと嫌味を言い出したりするという。

 回答者である哲学者の鷲田清一氏は、「厄介ですね。年がいってから生き方を変えるというのは至難のことです」と語り、“指示―服従”の関係とは違う対等の関係に立てる場を見つけてあげることだろうと指摘する。たしかにこういう方向性しかないだろう。

 私が定年時に受講したライフプラン研修では、「これからは家庭や地域が活動の場になります」と言われたことを記憶している。しかしまずは会社とは異なる原理で動いている地域や家庭を理解することから始めなければならない。そうでなければ外出しても誰も相手にしてくれない。この修正は息の長い取り組みになることもある。

 かつて私の取材に応じてくれた人で、会社の仕事の枠組みを家庭にそのまま持ち込み「家でも人事部長をやっていた」と反省した人がいる。