恋の法廷式
北尾トロ著
定価:734円(税込)

「ご両親や生徒に対し、一生消えない傷をつけてしまった。生徒には二度と近づきません」

 被告人の口からは、もはや反省の弁しか出てこない。熱血教師になるはずが、生徒にホレて取り返しのつかないことをし、キャリアのすべてを失ったのは当然の報い。だが、必死の覚悟で親を振り切ってまで被告人に抱かれた生徒は、これからどうなってしまうのだろう。悪い夢から醒め、いつか立ち直ってくれることを願わずにいられない。

 そんなことを考えている間に、検察官の質問が始まっていた。捕まらなかったら今でも交際していたか。自らの家庭はどうするつもりだったのか。弁護人が触れずにいた、被告人に都合の悪いところを突いていくが、答えはきれいごとの範疇を出ない。と、その態度に業を煮やしたのか、検察官が強い口調で真相を暴露した。

「あなたは教師の立場を利用し、自己に好意を抱き、欲求に応えようとする生徒に、校内でキス、手淫、口淫をさせ……」

 校内でしたのはキスだけじゃなかったのかよ!

 不自然さを感じつつも、担任教師と生徒間の純愛物語として傍聴していた自分が馬鹿みたいだ。被告人は同情するそぶりで生徒の気を惹き、思うままに操って欲望を満たしただけだった。

 判決は求刑通りの懲役2年(執行猶予3年)。情状理由のひとつに示談の成立が挙げられたのは皮肉だった。被害者家族は、一日も早く事件を過去のことにするため、苦渋の判断をしたに違いないからだ。生徒が受けた傷を思えば、軽すぎる判決だと思う。

AERA dot.より転載