あまりにもドラマチックな結末に観戦していた人たちは興奮を抑えられなかったのだろう。試合結果を報じるネットニュースには多くのコメントが寄せられた。最後まで勝負をあきらめなかった仙台育英ナインを称えるものがほとんどだったが、ベースを踏み損なうというミスを犯し敗戦の責任を一人で背負い込むことになりそうな一塁手を気遣うものや、最後で踏ん張り切れなかった投手を慰めるものも少なくなかった。それらのコメントには凄い試合を観た感動と、激闘を演じた両校ナインへの感謝があふれていた。

 ところが驚いたことにネットでは、それとは別に仙台育英のある選手を非難するコメントが飛び交っていたのである。勝敗を分けた一塁手のベース踏み損ないは、その選手の悪質なプレーが原因になっていると決めつけ、中傷する言葉が投げつけられたのだ。

仙台育英の選手に向けられた
心ないネットのコメント

 問題のプレーは仙台育英の7回裏二死の攻撃で起きた。その選手はショートゴロを打ち、アウトになったのだが、一塁を駆け抜ける時、一塁手のふくらはぎのあたりを蹴る形になってしまった。一塁手はしばらく立ち上がることができなかったから、相当な痛みだったはずだ。

 それでも一塁手はベンチで手当てをし、8回以降も守備についた。そして9回、ベースを踏み損ねるミスをしたのだ。いつものようにベースに足を置いていなかったのは、7回に脚を蹴られた時の痛みや恐怖心があったからで、そのミスを引き出したのは脚を蹴った選手というわけだ。そうしたコメントがネットで飛び交ううちに論調はエスカレート。問題のシーンの動画を貼り付けて「わざと蹴ってる」という者がいれば、「ラフプレーだ」、「悪質だな」と応じる者も出てくる。「準々決勝ではブーイングしてやろうぜ」などというコメントも見られた。

 それだけではない。その選手はツイッターをやっていたようで、そこに誹謗中傷のコメントが殺到し炎上。アカウントを削除する事態になった。そして、その影響かどうかは分らないが、その選手は翌日の準々決勝を欠場した。観戦した者の多くを興奮させ感動を呼び起こした好試合にもかかわらず、その裏側ではこんなやりきれない騒動が発生していたのだ。

 この試合で起きた一連の事態は、大一番でセオリー通りのプレーができなかったことと、ちょっとした偶然が重なったからだといえる。