ソニー、シャープ、京セラに
残存者利益はあるのか?

 ところで、一般的には小さな市場から1社が撤退すると、競合企業は競争相手が消えた効果で儲かるようになる。これを残存者利益と言うのだが、携帯電話の場合はどうだろう。

 残存者利益効果が出ればソニー、シャープ、京セラの携帯事業の収益性は上がり、結果として営業利益が50億円から100億円といったレベルの「成長余地はないものの黒字のビジネス」に転じる可能性が、ないとは言えない。

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 しかし、本来であればグローバル市場で年間1億台を販売し、1兆円単位の売上を狙えた日本企業各社にとって、それは前述のように「大きな勝ち」とは言えないところが残念だ。

 その点で、今回の富士通の戦略は興味深い。まだ「腐っても鯛」の価値があるうちにハイエンド携帯ビジネスを売却して、その資金で隣接分野であるIoTに資源を集中しようという戦略のようだ。

 これから先、世界で500億個のモノがインターネットにつながる時代が来る。そのIoTは、技術という観点で見ればれっきとした携帯ビジネスである。しかも、これから広がる市場であるからこそ、戦略的なポジショニングが規模戦略でも特化戦略でも、いろいろと取れそうな余地がある。

 さらに言えば、旧電電ファミリーの知見や資源を集中することさえできる。様々な意味で、IoTは携帯電話の隣接分野の中でも戦いやすい場所に、成長の種が隠れている。

 もちろん、IoTの世界には日本企業にとって難しい障壁もたくさんある。それでも日本企業が技術力を生かせる場所で、そろそろ勝ちに転じて日本経済に活気を取り戻してもらいたいところである。富士通の英断に関しては、エールを送りたい。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)