社員寮のあり方が変わってきている。かつてバブル期には「屋内プール付きの豪華な社員寮」「100平方メートルの大型社員寮」などが話題を呼んだが、それは過去の話。近年は住宅機能以外にも狙いを持たせた社員寮が続々と建てられている。その狙いと背景を探った。(ダイヤモンド・オンライン編集部 松野友美)

老朽化で新設の寮を
ショールームとしても活用

社員寮が復活!ショールームや災害拠点併設など新タイプ続々JFEエンジニアリングの東神奈川寮

 JR東神奈川駅から歩いて5分程度の横浜市神奈川区に、10階建てで総戸数192戸のマンションがある。建物の角には、半円柱型のガラス窓が突き出ている一風変わった建物だ。

 実はこのマンション、JFEエンジニアリングの東神奈川寮だ。しかし、ただの寮ではない。ショールルームとしても活用しているのだ。

 半円柱型の構造物は、機械式立体駐輪場の「サイクルツリー」。立体駐車場の入り口で専用のカードをかざすと、機械が自動的に自転車を受け取り、機械内部に整然と積み上げて収納するのだ。

 また、機械式立体駐車場も備えているほか、屋上には太陽の移動に合わせて集光パネルが動く追尾型太陽光発電システムも設置されている。

 これらは、顧客に実物を見せる営業ツールとして活用しており、今も月に数件の視察がある。というのも、立体駐車場や自転車駐車場は主に自治体に納品するため、実際に見せようにも、絶えず利用者(市民)がいるため気軽に実演ができないからだ。

 そんな折、自社の独身寮を建てる話が出た。以前は関連会社の寮を間借りしていたが、その寮が老朽化で取り壊しが決まり、ここにショールーム付きの自社寮を建設したのだ。

 立体駐車場などの製品の価格を除いた建設費は十数億円。決して豪華な造りではないが最新の設備が付いており、家賃相場は8万円程度のところ、最上階でも1万8500円で住めるとあって人気は高い。