“財務省一家”の内輪の会だけに、率直な苦言やアドバイスだったが、OBたちの話を、黒田総裁は時に微笑みを浮かべながら聞いていたという。

 この会に出席していた藤井裕久・元蔵相はこう話す。

「毎年、このかるた会で黒田君と会っているが、今年は、任期中の物価目標の達成をあきらめているかのようだった。異次元緩和は失敗だったと分かっていても、やり続けるしかないと達観している印象を受けた」

「期待」に働き掛ける政策だから
目標を降ろせないというジレンマ

 黒田総裁率いる日銀が、「失敗だった」と分かっていたとしても、「2%物価目標」を降ろせないのには、いくつか理由がある。

 7月まで日銀の審議委員を務め、緩和慎重派だった木内登英・野村総合研究所主席研究員はこう話す。

「物価目標は異次元緩和策の大きな柱。それが正しいということで打ち出したのだからやめられない。メンツがある。しかも、目標に達するまで緩和を続けるという『期待』に働き掛ける政策だから、目標を降ろすとなると政策効果はますます落ちてしまうというジレンマを抱えているのだ」

 しかも、日銀が国債を大量に買い続ける中で、流動性が極端に少なくなってきた国債や株式市場は、ちょっとしたきっかけで大きく触れたり、混乱したりする懸念がある。

「日銀が、路線変更に動き始めたと市場が感じた時に、市場がどう反応するかが読めないし、混乱するリスクを怖れている」(木内氏)

 結局、市場の反応が怖いから動こうにも動きが取れない、「自縄自縛」の状況に陥っているというわけだ。

 加えて政治的な要因も影を落とす。