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東京電力が電気料金の10~15%の値上げを模索している。その数字の根拠はどこにあるのか。
格付け会社スタンダード&プアーズの柴田宏樹上席アナリストは、「(福島原子力発電所事故の影響で休止している)原発の代わりに動かす火力発電の燃料費増加コストを補うぶんを考えると、15%前後となる」と言う。
東電の売上高は約5.1兆円(2010年度)。原発の代替燃料費の増加分は約8000億~1兆円と予測される。仮に8000億円とすると、売上高5.1兆円との比率は15.7%。これだけ値上げすれば、燃料費増加分をユーザーにそのまま転嫁できるのだ。
電気事業法で、コスト上昇分を料金に反映できる総括原価方式が認められているため、15%の値上げ申請の理屈は通る。
しかし今日、15%丸々の値上げは、国民感情的には納得できないところだろう。認可の権限は、「(原発事故の賠償責任は)一義的には東電にある」と言ってきた枝野幸男経済産業相が持つ。また東電は、損害補償に向けた政府の支援を受けるため、原子力損害賠償支援機構と共同で特別事業計画を10月にもまとめ、経産相に認可されなければならない。
計画の認可のポイントは、東電自体が損害補償の原資を可能な限り捻出することにあり、枝野経産相は東電にぎりぎりのリストラを求めていくだろう。それは同時に、経常費用を下げていくこととなり、前述の代替燃料費の増加分を一部吸収することになる。
最初に15%とぶち上げておいて、精一杯の努力をして約10%になったという落としどころが見える。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)