株主と企業のなれ合いを招き、緊張感なき経営の助長が問題視される株式持ち合い。近年はその解消が進んできたが、実は「隠れたなれ合いの構図」ではないかと疑いを掛けられてきたもう一つの問題は手付かずのままだった。しかし、ついに今年の株主総会から疑惑払拭に向けた試みが開始。波乱を呼んでいる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
「目立ちたくなかったのでこっそりホームページに載せたが、メディアは待ち構えていたようだ。あっという間に派手な見出しが付いたニュースになって出回った」。ある信託銀行の関係者はそう苦笑いした。
メディアが待ち構えていたというその代物とは、信託銀行が今夏初めてオープンにした議決権行使の個別開示の結果だ。
「議決権」とは、株主が企業の株主総会において経営陣選びや資産の使い道など重要案件を決める際に用いる“投票権”のこと。票を賛否どちらに投じたのか、個別企業の議案ごとに全て開示したのだ。
対象となった企業と議案の数は、信託銀行で最多だった三井住友信託銀行で1710社、1万8709件にも上る。そして、その開示資料の中には、通常ではあり得ない“光景”が広がっていた。
例えば、三菱UFJ信託銀行による個別開示では、同じ三菱グループである三菱自動車の株主総会において、会社側が提案した取締役11人中5人の人事案に対してNOを突き付けたことが明らかになった。