日本版スチュワードシップ・コードの理想と現実
機関投資家との「対話」は役に立つのか?
年金基金や運用会社のような他人のお金をまとめて運用する「機関投資家」は、株主として会社経営に貢献できるのだろうか。
「貢献できる」と考えている人が作ったのが「日本版スチュワードシップ・コード」だろう。そして、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめとする大きな年金基金や共済、さらにこうした機関投資家を顧客としている運用会社などが、同コードの趣旨に賛同する旨を発表している。
日本版スチュワードシップ・コードは、詳しくは「『責任ある機関投資家』の諸原則<日本版スチュワードシップ・コード>」(日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会。2014年2月26日)にまとめられている。
同コードはスチュワードシップ責任を、「『スチュワードシップ責任』とは、機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「顧客・受益者」(最終受益者を含む。以下同じ)の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を意味する」と定義する。
機関投資家は、「企業価値の向上」や「持続的成長」をもたらす「対話」の相手たり得るのだろうか。
機関投資家が投資先の企業に対して明確な影響力を持つのは、株式の議決権行使の際だが、同コードは「原則」の5番目で、「機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである」とうたっている。