定年後も無理なく社会とつながっていられる「3つのパターン」

定年後、自由な時間を楽しめる人は幸せである。多くは、自由な時間を持て余し、やるべき何かを模索し始める。では、どのようなかたちで、社会とつながることができるだろうか。

ハローワークで経験したやり取りは…

 定年退職者が社会とつながることを考えてみると、概ね3つのパターンがある。

 1つは、組織で働くという選択である。これは雇用継続で65歳まで元の会社で引き続き働くケースや関連会社で働く場合もある。またハローワークや民間の人材紹介会社、知人に紹介してもらう場合もあるだろう。

 2つ目は、それまでの勤め先企業の業務と関連のある仕事に就く人たちだ。保険会社で営業を担当していた会社員がキャリアを活かして保険代理店を始めるような場合である。

 3つ目は、今までの仕事とはまったく違う生き方に取り組むケースもある。蕎麦屋を開店したり、農家で独立するような起業するケースもあれば、陶芸や好きな研究に打ち込んだり、昔の音楽仲間と一緒にバンドを新たに組んだり、僧侶になったりする例もある。

 どのような社会とのつながりを目指したとしてもそこには優劣はない。今回はいくつかの具体的な事例を通して考えてみたい。

 定年または雇用延長が終了して再び組織で働くことを目指すのは不自然ではない。むしろ当然の対応だと言えるだろう。

 私も退職後ハローワークで担当者に相談してみたことがある。希望の職種を聞かれたので、定年前に経理部で取り組んだ「経費チェックの仕事か、コインロッカーの管理の仕事」と答えた。担当者は「すごく具体的ですね」と驚いていた。普通は、人事とか経理とか営業とかいう人が多いらしい。

 経理の仕事については、「簿記2級とか資格はありますか?」と尋ねられて「ありません」と答えると、すぐに「なぜコインロッカーの仕事がしたいのですか?」という質問に移った。「以前から興味があって、管理会社という内側からコインロッカーを見てみたいから」と答えると笑われた。「場合によっては本に書きたい」という言葉は呑み込んだ。

 経理の仕事もコインロッカーの仕事も望み薄の反応だったので、いろいろ話を聞いてみた。やはり60歳を超えると、特別な技能や営業力がないと正社員として勤めることは難しい。現実には、パート的な仕事か業務委託の仕事になるだろうとの説明だった。

 例として、マンションの管理人、駐車場での誘導係、工事現場での安全管理の補助などを挙げられた。また経理の仕事から連想したのだろうが、デスクワークよりも現場で身体を動かす仕事の方が決まりやすい。コインロッカーの管理の仕事はいいとは思うが、そういう求人はこのハローワークには来たことはない、との説明だった。