SNSなどのソーシャルメディアは、中東諸国や中国などでは民主化を進めるための手段として不可欠なものとなっていますが、メキシコではまったく別の意味で不可欠なものとなっていることをご存知でしょうか。メキシコの地方に住む人にとって、サバイバルの手段として不可欠になっているのです。
メキシコでのソーシャルメディアの役割
メキシコでは麻薬などの組織犯罪が多く、特に幾つかの地方では殺人事件やマフィアの抗争が日常茶飯事となるほどに、非常に危険な状態となっています。その中で、メキシコの全国メディアは当然そうした組織犯罪を報道していますが、ローカルメディアは詳細をあまり報道していません。
昨年は、危険な地方の5つのローカル新聞が地元での麻薬戦争などについての報道を止めると宣言しました。理由は、記者や社員が命の危険にさらされるからです。実際、昨年は1年間で15のローカル新聞のオフィスが襲撃されたそうです。
ちなみに、危険な地域では、ローカルメディアの報道の内容が反社会勢力に支配されることもあるようです。実際、メキシコ中部のサカテカス州では、記者が地元マフィアに誘拐された地元紙Imagenが、脅迫によって軍を批判する記事を書き続けました。また、スタッフが誘拐されたテレビ局Milenioも、マフィアが作った報道の一部を放送しました。
また、幾つかの州では、州政府が地元ローカル新聞の広告スペースを買い上げた上で、もし政府に不利な報道をするならば買い上げを止めると新聞社に圧力をかけている例もあるようです。その結果かどうかは分かりませんが、例えばベラクルスでは、8月に水族館で爆弾が爆発したのに、地元メディアではこの事件がほとんど報道されなかったようです。
こうなると、地方の住民は地元マスメディアを信頼できなくなります。事件が頻発して治安の面で不安が大きいのに、その真実が正しく報道されないのですから、当然でしょう。その結果、地域の住民は正しいニュースをネット、特にソーシャルメディアに求めるようになっているのです。