昨今の北朝鮮絡みの円高は、リスクオフの連想から生じるステージ(1)と(2)の条件反射程度のものと判断される。北朝鮮問題の帰結は、(a)軍事衝突を回避しながらの外交模索、(b)全面的なミサイル攻撃、という両極シナリオの可能性を無視できない。

 この場合、市場の巨大機関は事前に(b)に備えて退避するわけにもいかず、(a)に基づく通常行動を続けざるを得ない。北朝鮮のニュースで円高動意は生じても一時的・限定的にとどまる。ただしリスク投資を増やせる状況ではなく、リスクオン期待の円安動意も続きにくい。

 北朝鮮問題を除けば、ドル円相場は底堅い。米景気は堅調であり、欧・中景況の改善で全般的な円安環境が維持されている。短期的には、地政学的緊張が高まると110円を割れ、緊張緩和で110円台を回復するレンジ展開だろう。

 いざ有事となれば、シナリオは多岐に分かれ、3ステージが複雑に錯綜する。戦禍で日本の金融システムが動くか否かでも展開は異なろうが、少なくとも一時的には円高とみる。あらゆる事態による通貨現象を読み解くことを職務とするが、有事を軽々には考えたくないし、現実にならないことを切に願うのみ。平時のファンダメンタルズに沿って115円超への中期円安経路が続く世界を期待したい。

(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)