若者を中心に新聞離れが進んでいるという。日本新聞協会の調査によると、わが国では2000年には人口1000人あたり570部の新聞が発行されていたが、2010年にはこれが497部(13%減少)まで落ち込んだ。それでも諸外国と比べて見ると、成人人口1000人あたり部数(2009年)では、わが国は、米国(201部)、中国(100部)、英国(332部)、ドイツ(278部)、フランス(193部)などを圧倒する新聞大国(日本は459部)であることに変わりがない(もっとも、スイスや北欧諸国は日本を上回る普及度を示しているが)。

日本の市民は新聞を信頼し過ぎている

 ところで、ここに面白い図表がある。これは、世界主要各国の新聞・雑誌に対する信頼度をまとめたものであるが、わが国の新聞・雑誌に対する信頼度が突出して高いことが読み取れる。

 こうなった理由については、やや本筋から離れるのでここでは詳述を避けるが、いわゆる1940年体制の下で、20世紀後半のわが国の政策運営がことごとく図にあたり、未曾有の繁栄を実現したことがやはり大きいと思われる。平たく言えば、お上の言う通りに一所懸命働いたら所得が倍増するような恵まれた社会においては、一般に、人は、大本営発表を疑わなくなるのである。

 なお、このような図表をいわゆる日本人論やアメリカ人論で説明する向きが多いが、それは誤りである。生まれたばかりの日本人の子供を、アメリカ人に養子に出してワシントンで育てれば、その子供はアメリカ人と同様の思考パターンを見につけるだろうし、その逆も、また真だからである。

 ともあれ、わが国は今なお依然として新聞大国であり、しかも市民が新聞を信頼し過ぎているという先進国の中ではかなり特殊な状況下にある。この2つの条件だけを考えても、社会の木鐸である新聞の責任がとりわけわが国では重いこと、この上ないではないか。