「ぶら下がり取材」はもちろん、「夜討ち・朝駆け」のようなクローズな取材方法は、もはや過去の遺物である。記者クラブ加入の有無にかかわらず、誰でもが自由に参加できる要人のオープンな定期会見を定着させることこそが、「言葉狩り」のような不毛な風潮を一掃し、この国のメディアと政治のレベルを高める第一歩となるのではないか。もちろん、オープンな定期会見では、質問者も堂々と名乗りを上げて顔を見せる(テレビ等に映る)ことが大前提となることは言うまでもあるまい。

 私たち市民は、メディア対要人の真剣な対話・討論の模様こそを知りたいのであって、何も要人の気の利いたワンフレーズを知りたいわけではないのだ。

国語ではなく算数の記事を

 わが国の市民社会を成熟させ、国をリードする政治家の能力を高めるために、特に新聞界に望みたいことは、「国語ではなく算数」の記事を書いてほしいということだ。要するに、形容詞の羅列ではなく、具体的な裏づけのある数字やデータを丁寧に検証・添付してほしいということに他ならない。

 最近では、連日のように「円高で企業が悲鳴」とか「製造業の空洞化でわが国の雇用は大変」といった活字が紙面に踊っているが、たとえば円高は対USドルの名目値での話であって、すべての外貨に対してではないし、また、購買力平価で見れば違った絵姿が見えてくるはずである。

 円高問題については9月13日の当コラムでも私見を述べたが、大切なことは多面的な物の見方を、数字やデータを駆使して、読者に「見えるようにする≒考えさせる」ことではないだろうか。新聞の使命が、決して読者を煽ることであってはならないことは、歴史の教えるところである。

 同様に、「製造業の空洞化」についても、「空洞化」という言葉の使い方からして本当に正しいのか(「発展」もしくは「グローバル化」ではないか)、また、雇用が具体的にどの程度の影響を受けているのかなどについて、数字やデータをきちんと示して説明してほしいと思うのは無理な相談なのだろうか。