やせるために走る、がんばってカロリー制限する。そうした努力はすべてムダである。いまだに「カロリー神話」が信じられているが、肥満とカロリーは無関係。そんな努力をしている人には、まず太るメカニズムの知識が必要だ。20万人以上の臨床経験と、生化学×最新医療データ×統計データから、医学的エビデンスに基づいた本当に正しい食事法をまとめた牧田善二氏の新刊『医者が教える食事術 最強の教科書』から、内容の一部を特別公開する。
やせるには運動ではなく食事
――運動で減らせる体重には限界がある
「やせるために走っている」というビジネスパーソンがたくさんいます。毎日の仕事だけでも疲れるでしょうに、ご苦労なことだと思います。しかし、本当にダイエットを考えるなら、運動するよりも食事を変えることです。運動で減らせる体重などたかが知れており、とても効率的とは言えません。
もっとも、多くの人がこれまで「食事よりも運動で減量したい」と考えてきた理由は、私にはよくわかります。食欲には勝てないからです。とくに男性は、「お腹をすかしているくらいなら、ハードな運動に耐えたほうがいい」と考える人が多いのです。
しかし、そういう思考回路に陥ってしまったのは、ひとえに正しい知識がなかったからです。実は、ダイエットにカロリー制限は無用。空腹に耐える必要などありません。
あなたは、自分が太るメカニズムについて、ちゃんと理解していますか? あなたを太らせるのは唯一「糖質≒炭水化物」であり、その摂取さえ控えれば運動などしなくても減量できます。
詳しくは、新刊『医者が教える食事術 最強の教科書』をご覧いただきたいのですが、すべての炭水化物はブドウ糖に分解され、血液中に流れます。すると、血糖値を一定基準に保つために、膵臓からインスリンが出てきます。そして、インスリンは余ったブドウ糖をグリコーゲンに変えて肝臓や筋肉の細胞に取り込みます。それによって、健康な人は、血糖値が上がり過ぎずにすんでいるのです。
しかし、グリコーゲンとして細胞内に取り込める量には限界があり、さらに余ったブドウ糖は、今度は中性脂肪に形を変えて脂肪細胞に取り込まれます。これこそが肥満の原因です。
中年男性の多くが悩むぽっこりお腹の中の脂肪は、油っぽいものを食べた結果ではなく、糖質を過剰摂取したことで余ったブドウ糖が中性脂肪に姿を変えたものなのです。
インスリンは、血糖値の上昇から私たちを守ってくれる非常に重要な物質ですが、こうした働きから「肥満ホルモン」とも呼ばれます。だから、減量したければ、「炭水化物」の量を減らせばいいだけのことなのです。
ところが、スポーツクラブのインストラクターなどから「運動をせずに食事だけでダイエットを行うと筋肉が落ちてしまう」と吹き込まれるケースがあるようです。
「運動をすれば筋肉がつく」というのは事実です。しかし、「食事制限でやせると筋肉が落ちる」というのはウソです。
新刊『医者が教える食事術 最強の教科書』で詳しく解説していますが、食事で糖質を制限すれば、まず、グリコーゲンが使われ、次にようやく脂肪が燃えます。その脂肪(体中の脂肪細胞に溜め込まれた中性脂肪)が全部使われてしまったときにはじめて、私たちは筋肉のタンパク質からエネルギーを得るようになります。つまり、筋肉が落ちるのです。
そんなことは、山で遭難して何も食べずにいたようなときにしか起きません。そして下の図のとおり、70キロの男性には、1か月以上の脂肪エネルギーのストックがあるのです。少なくとも、ぽっこりお腹を気にしている中年男性が、筋肉からエネルギーを得なければならないほど食事制限を貫いてしまうなどということは考えられません。
(この原稿は書籍『医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)