出光と創業家の法廷闘争は今後の経営に良い影響を及ぼす

 出光興産株式会社が昭和シェル石油株式会社との合併を目指す中で発表した公募増資計画(※1)を巡り、出光の創業家が新株発行の差し止めを申し立てた仮処分申立てで、東京地裁は7月18日、差し止め請求を却下する決定を下しました。創業家側は決定を不服とし、東京高裁に即時抗告を申し立てましたが、東京高裁は19日、新株発行は著しく不公正な方法により行われたとはいえないとし、創業家側の即時抗告を棄却しました。

 このまま創業家の影響力は低下し、出光と昭和シェルの合併は進むのか。数多くの企業の社外取締役等の役員を務め、コーポレートガバナンスの第一人者である牛島総合法律事務所の牛島信弁護士に、出光を巡る一連の動きをどう見るか、意見を伺いました。

法廷闘争に至った原因と経営への影響

――出光の創業家と経営側が法廷闘争に至った今回の問題を、どう見ていますか。

 出光問題に伏在するのは、創業家の問題というより、法的には財団の運営管理の問題です。公益財団法人へ寄付した株式についての公益財団法人の議決権(※2)は、創業家があたかも相続したかのごとく行使されているのではないでしょうか。財団に外部理事が要求されていないという、上場株式会社のコーポレートガバナンス・コード(※3)における独立社外取締役の要請と、実は全く同じ問題があるのではないかと私は思います。

――本来は創業家のものでないものを、私物化しているということですか。

 法的に私物ではないですからね。それなのに報道する側は、出光の公益財団法人のガバナンスや理事の責任の部分に、ほとんど着目していないわけです。「もともと創業家が設立した財団だから、経営側は言うことを聞いて当然」というレベルの理解なのかもしれませんが、それは大きな間違いです。