ダンボール箱製造機、ミリ単位の「折れ精度」が品質のカギだった仁内邦男(三菱重工印刷紙工機械 開発本部技術部部長・写真左)はEVOLの“生みの親”、波多野 治(三菱重工印刷紙工機械 開発本部技術部主幹・同右)は“育ての親”と呼ばれる

 大物流時代が到来し、社会に欠かせない“インフラ”となった段ボール箱。三菱重工業グループは、約60年の長きにわたって段ボール箱の製造機械の開発・生産を手掛けている。

 その中でも2003年にローンチされた「EVOL」シリーズは、世界23カ国で支持されるロングセラー。今も月間5台が世に送り出されている。

 その性能に寄せられる顧客からの信頼は絶大で、EVOL製段ボール箱の「品質」が日米の産業界のスタンダードになることもあるほど。EVOLの投入によって、三菱重工グループはいまや段ボール製函機メーカーの国内トップまで上り詰めた。

 だが、道のりは平たんではなかった。EVOLの初号機の開発リーダーを務めた“生みの親”である仁内邦男と、改良を重ねてシリーズ化を担ってきた“育ての親”である波多野治は、「ほんの15年前まで、うちの製函機事業はまさしくピンチに直面していた」と口をそろえる。

 開発に着手した01年、同事業(当時は三菱重工本体に属していた)は、あろうことか整理対象事業にノミネートされていた。EVOLの1代前の旧型機「Sシリーズ」がちっとも売れなかったからだ。販売不振の原因は実にシンプルだった。「高額な割には、性能で競合機種に劣る部分があった」(波多野)のだ。

折り曲げの数ミリメートルのずれで
ゆがみが生じる繊細さ

 そもそも段ボール製函機とは、段ボールシートを畳まれた状態の段ボール箱に加工し、積み上げるところまで自動的に行う機械のことである。まず、段ボールシートに企業ロゴや商品名などを印刷。切り込みや折り線を入れ、「あとは箱のふたと底をふさげば完成」という段階まで仕上げる。