社内オーディションの場面 ――スター社員誕生の瞬間――

 では、実際の社内オーディションの様子を一つご紹介しましょう。

 たとえば、ある企業で、社運を賭けた新商品を開発するプロジェクトを発足することになりました。さて、その仕事をいったい誰に任せればいいでしょうか?

 こんなとき、社長と経営幹部は社内を見渡して、プロジェクトリーダーやメンバーにふさわしい人の候補を挙げて、密かに候補者を絞り込んでいきます。

 そして、いよいよ審査開始です。とはいっても、まだプロジェクトの発足は、社内でも秘密事項。おおっぴらに面接試験なんてできません。そこで、候補者が仕事をしているところに近づいていって、こんなふうに尋ねます。

「君は、どんな仕事が得意なの?」

「その仕事では、いつもどんな工夫をしているの?」

「君は、どんなときに仕事の喜びを感じる?」

 これがオーディションであるなんて、本人には伝えません。質問することは、いつもの世間話やあいさつに毛が生えた程度のことばかり。そんな何気ない会話を通して、候補者の人柄や能力、仕事に打ち込む意欲や姿勢を判断して、その人を推薦するかどうかを決めていきます。

 そして、ある日、社内で辞令が出ます。

「佐藤太郎殿 △月△日付で、○○プロジェクトのリーダーに任命する」

 これが、スター誕生の瞬間です。

 選ばれる人にとっては、予想外の大抜擢かもしれません。あるいは、何年も待ち望んだチャンスを手に入れる瞬間かもしれません。

 オーディションで選ばれるのは、会社員とは限りません。自営業の人だって、講演会やパーティなどの会場で交わしたちょっとした会話が、実質的なオーディションとなり、仕事を発注される可能性もあるのです。

 いずれにしても、毎日どこかで、誰かが選ばれているのです。

 次に選ばれるのは、「あなた」かもしれません。

 では、あなたがオーディションで選ばれるためには、どうすればいいでしょうか?