僕らは、いったいどのような社会を目指すのか

 この連載の最終回で僕が提案したいのは、震災を機に僕らの活動や社会のあり方を「再定義」してみないか、ということだ。

 震災以降、日本全体のムードは停滞感に満ちているように思える。だが、世界第三位の経済大国、世界トップクラスの技術力があり、かつ、世界に通用する日本企業もまだまだある。過渡期を迎えつつあるが、諸外国に比して、行政のサービスは未だに信頼できるレベルにあるし、すべてのインフラはこの未曾有の災害を迎えても短期間で復旧し、何事もなかったような空気さえ流れている。

 本連載で紹介した復興のリーダーはみな、グローバル化する社会の中で日系人をはじめとする新たな眼差しを得て、自らを変化させようとしている。

 この記事を書いている今日も、日本の社会起業家と海外の財団、支援者をつなぐ打ち合わせを終えたところだ。日本の「まちづくり」が社会にとってどういう意味があり、定量化するとどういうインパクトが望めるのか、それが世界にとってどういう意味あるのか、自らの活動を「再定義」するまたとない機会だということを実感する。

 もし、 「世界」に目を向け、対話を重ねることで、新しい発想が生まれ、かつ、震災復興に期待する世界の支援者の力を束ねることことができ、日本の閉塞感を打ち破れるとすれば、何か変っていく予感がしないだろうか。

 我々に足りないのは、「いったいどのような社会を目指すのか」という前向きな意思決定と、「自らの社会が抱える問題を自らが解決するのだ」という新たな起業家精神だけだ。

 

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「被災地復興のために我々が為すべきことが、ここにはある」

『辺境から世界を変える――ソーシャルビジネスが生み出す「村の起業家」』

【最終回】<br />世界最大の「被援助国」ニッポン<br />社会を「再定義」する機会としての震災復興

「何もないからこそ、力もアイデアもわくんだ!」(井上英之氏)
先進国の課題解決のヒントは、現地で過酷な問題ー貧困や水不足、教育などーに直面している「当事者」と、彼らが創造力を発揮する仕組みを提供するため国境を越えて活躍する社会企業家たちが持っている。アジアの社会起業家の活躍を通して、新しい途上国像を浮き彫りにする1冊。
そして著者は被災地へ。
アジアの最果てで得た智慧は、復興、そして地域再生に役立ち始めた!

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書籍への感想をまとめました!

 

加藤徹生(かとう・てつお)
1980年大阪市生まれ。
社団法人wia代表理事/経営コンサルタント。
大学卒業と同時に経営コンサルタントとして独立。以来、社会起業家の育成や支援を中心に活動する。 2009年、国内だけの活動に限界を感じ、アジア各国を旅し始める。その旅の途中、カンボジアの草の根NGO、SWDCと出会い、代表チャンタ・ヌグワンの「あきらめの悪さ」に圧倒され、事業の支援を買って出る。この経験を通して、最も厳しい環境に置かれた「問題の当事者」こそが世界を変えるようなイノベーションを生み出す原動力となっているのではないか、という着想を得、『辺境から世界を変える』を上梓。
2011年6月末より、東北の復興支援に参画。社会起業家のためのクラウドファンディングを事業とする社団法人wiaを、『辺境から世界を変える』監修者の井上氏らとともに9月に立ち上げた。
twitter : @tetsuo_kato