日本の市民社会に求められている「チャレンジ」
この「ベンチャー・フィランソロピー」が発達したのは、米国ITベンチャーの隆盛によって、莫大な余剰資金を得た創業メンバーが、社会問題の解決に乗り出し、寄付に「倍率」を求めるようになったことが大きい。この文脈で期待されているのは、「社会起業家」たちだ。ビジネスの手法を非営利の世界に持ち込み、短期間で飛躍的な規模の課題解決を目指そうとする。
世界的に、この社会起業家の活動は影響力を増しつつあり、各国で市場や行政を補完する機能の一つとして注目を集めつつある。
この分野で日本の国際的な評価はまだまだ低い。たとえば、数字で見るとこうだ。
人口1億人あたりを基準に考えると、世界的に認知された日本の社会起業家はたった2人、それに対し、世界平均では35人。一人あたりGDPを基準に考えると、世界的に認知された社会起業家数は世界平均の5000分の一以下しかない。(注2)
しかし、僕自身もこのセクターで10年以上、仕事をしてきたが、この実態を考えてみると、急速な高齢化や格差の拡大に苦しむ「課題先進国」と言われる日本で、多くの社会起業家は日本らしい飛び抜けた品質のサービスの提供に成功してきた。たとえば、「生協」のモデルをアジアで話をすると、絶賛されるし、環境教育、オーガニックビジネス、まちづくり、介護、保育など、高く評価されるモデルも多く、海外へのモデル移転に成功しているモデルも少なくない。
それは、実態として実のある活動していない、という訳ではなくて、むしろ、それを伝えることに力をかけてこなかったということが事実ではないか。
(注2)「世界的に認知された社会起業家」の定義として、シュワブ財団およびアショカ財団からの認定・栄誉を基準とした。また、人口・GDPの統計に関しては、2011年度の国連の統計による09年の推計結果をもとにした。(UN 2011)