ねじ加工から溶接まで自ら
スライダー対応機種も投入

 そんなマシンの丈夫さは、さまざまな製造工程を一つ一つ手作業で進めていく、独自の手法に支えられている。部品のねじを旋盤(工作機械)で加工することに始まり、シャフトやボルトの溶接、各部品の組み立て作業に至るまでを1人でこなし、ピーク時には年60台ほどを製造していたという。

 さらに、「製品に思い入れのない人に任せるとぞんざいに扱われる可能性がある」という考えから、完成したマシンの運搬作業も自前で手掛けるほどだ。

 遠方の球団のキャンプ地や練習場まで新品を届けるほか、既に納入したマシンについては、点検のために回収する必要もある。そのため、八つのマシンを積める2トントラックに乗って各地を巡り、地球1周半超に相当する約7万キロメートルを移動した年もあった。その時期には「3年で5日しか休めず、日付が変わる前に帰ることがなかった」ほど忙しかったという。

 職人かたぎの吉田は「商売のことはほとんど考えていない」と、家族を中心に小規模で営む会社経営や取引について多くを語ろうとしない。そこで、専務を務める営業部の長男にも話を聞いた。

 製品は対応する球速の幅などによって大きく10種類あり、基本的に硬式ボール用だが、軟式用の最も安いタイプは40万円ほどで販売している。最上位機種は130万円程度で、これは数年前に販売を本格化させたばかりの新しいタイプだという。アーム式は上からボールを振り下ろす構造上、球種はストレートに限られていたが、新製品では変化球であるスライダーを投げることができ、既に一部プロ球団の練習に導入されている。

 まさに職人技は日進月歩。吉田が初めてスライダー対応の試作品を造ったのは四半世紀ほど前のことだが、制球のばらつきといった問題が解消されず、製品として売り出すには納得のいかない時期が続いた。部品形状などの改良を重ね、品質に厳しい職人の目で見て問題ない水準に達して、ようやくゴーサインを出すに至った。

 素人目には、ストレートの球速がどれぐらいまで出せるのかも気になるところ。吉田加工所の販売機種によっては、日本ハムファイターズの大谷翔平選手(最高165キロ)を凌ぐ170キロ程度のボールを投げられるが、マシンの主な使用目的は打撃姿勢の確認であるべきで、豪速球を打ち返す練習はあまりお勧めしないという。