オリーブオイルはやせる
――糖質と一緒にとるだけで血糖値を抑えられる

「太るのは脂肪ではなく糖質摂取によるものだ」ということについて、そろそろ理解が深まってきたことと思います。それでも、長くカロリー信仰を押しつけられてきた日本人にとって、脂肪をたくさんとるのは怖いものでしょう。

 そんなあなたに、信頼のおける医学誌「European Journal of Clinical Nutrition」で報告された驚くべきデータを紹介しましょう。下の図を見てください。健常者を対象に、「パンだけを食べた場合」「バターと一緒にパンを食べた場合」「オリーブオイルと一緒にパンを食べた場合」「コーンオイルと一緒にパンを食べた場合」の血糖値の変化を調べた結果です。

パスタは和風より、油たっぷりの方が太りにくい

 一目瞭然、パンという糖質を単独で食べると、30分後に血糖値が急上昇しているのに対し、何かしらの油と一緒に摂取すると血糖値の上昇が緩やかになることがわかるでしょう。つまり、糖質を単独でとるよりも脂肪を一緒にとったほうが太らないのです。とくに、オリーブオイルの効果は絶大です。

 もう一つ、やはり信頼のおける「Diabetes Care」に、面白い研究論文が載っています。近年、GI値(食後血糖値の上昇指標)が一般化してきましたが、高GI食と低GI食それぞれを、不飽和脂肪酸であるエキストラバージンオリーブオイルを加えたケース、飽和脂肪酸であるバターを加えたケース、ローファットにしたケースで、食後の血糖値にどのような変化があるか調べたものです。

 その結果、高GI食においてとくに、オリーブオイルを加えたときに、食後血糖値が低く抑えられることがわかりました。ちなみに、この研究では37グラムという結構な量のエキストラバージンオリーブオイルを摂取しています。

 これらの結果から、「オリーブオイルはやせる」と言っていいようです。

炭水化物は「脂質」と一緒に食べる
――オリーブオイルたっぷりのパスタが体にいい理由

 パンを単独で食べるよりも、脂質と一緒にとったほうが血糖値は上がらずにすむという嬉しい現象は、ほかの炭水化物にも当てはまります。

 仕事関係者とランチを共にするときなど、なかなか自分の好きなものを選ぶことができません。炭水化物の塊であるパスタ料理のお店へ行くこともあるでしょう。こんなときも、「脂質と一緒」を意識してください。

 パスタを食べるなら、一緒にオリーブオイルを摂取できるようなメニューにすれば、血糖値の上昇を抑えられます。おそらく、さっぱりした和風味のものよりも、イタリア人が好みそうなもののほうが、よりたくさんのオリーブオイルが使われているはずです。

 もちろん、素人判断をせずに店のスタッフに聞いたらいいでしょう。あるいは、テーブル上にオリーブオイルが置かれていたら、どんどん使わせてもらいましょう。

 また、お酢を加えることで血糖値が上がりにくくなることもわかっていますから、中華料理店で焼きそばを食べるときには、お酢をたっぷりかけましょう。

「オリーブオイルなんかかけたら、カロリーが上がって太ってしまうはずだ」とか、「お酢をかけてみたところで、そのもの自体のカロリーは変わらないではないか」という考えは古いのです。

 そういう、カロリー信仰は、代謝過程で人間の体になにが起きるかという生化学についてなにも知らない人の言うことです。あなたは、最新のエビデンスに基づいた知的な方法で、食事をコントロールしていきましょう。

(この原稿は書籍『医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)