トランプ税制改革の年内実現が厳しいとみられる理由Photo by Keiko Hiromi

トランプ大統領の攻撃的な発言に注目が集まり、政策の調整の難航、格差や移民問題も根深い米国。本連載はシンクタンクの調査員として長年米国に駐在し、同時多発テロや金融危機、オバマ政権の誕生等も経験した著者が今の米国の経済・政治を読み解くためのキーワードを解説し、歴史的な視点も交えて掘り下げていく。(みずほ総研・欧米調査部長 安井明彦)

三度目の正直?
トランプ政権の税制改革「枠組み」発表

 2017年9月27日、トランプ政権が目指す税制改革の「枠組み」が発表された。言うまでもなく、税制改革はトランプ大統領の重要公約の一つである。議会共和党指導部との協議のうえで発表された今回の枠組みでは、個人所得税や法人税の税率引き下げ等、大型の税制改革を目指す方針が明らかにされた。トランプ大統領は、「米国民にとって歴史的な減税になる」と鼻息が荒い。

 もっとも、こうした枠組みの内容自体に、さしたる驚きはない。無理もない。2017年1月の政権発足以来、トランプ政権が税制改革の方針を示すのは、実に今回で3回目である。4月、7月に発表された方針から、大きな転換が見られたわけではない。

 むしろ焦点は、果たして今回の枠組み発表によって、議会が具体的な税制改革案の審議に乗り出すかどうかである。議会はトランプ政権にとって鬼門だ。オバマケアの改廃など、多くの公約が議会での立法化に手間取ってきた。税制改革にしても、過去2回の方針発表があったにもかかわらず、議会での法案審議は始まってすらいない。

 トランプ政権は、年内の税制改革実現を目指している。そのためには、今回の枠組み発表がきっかけとなり、議会での実質的な審議が始まることが欠かせない。「二度あることは三度ある」では困る。トランプ政権に必要なのは、「三度目の正直」だ。