「私の専門は環器内科で、心筋梗塞などの心血管疾患の治療や再発予防に当たっています。たとえば心筋梗塞の治療のひとつである心臓カテーテルは1回の治療費が200万円かかります。必要性の低いヘパリン類似物質の処方に使われている93億円を回せば、カテーテル治療が4500回以上できて、救える命が増えていきます。

 私は皮膚科医ではありませんが、クリニックは内科を標榜しているので、日々、さまざまな患者さんを診察しており、ヒルドイドの問題も無関係ではありません。一保険医として健康保険の適正利用を促すために、この機会にヘパリン類似物質の処方について当院の対応を明らかにしておくことにしたのです」(五十嵐医師)

ヒルドイド単剤の処方は
保険適用外になる可能性も

 健保連では、今回の分析結果に基づいて、病名が皮膚乾燥症でヘパリン類似物質または白色ワセリンのみの処方で、他の外用薬や抗ヒスタミン薬と同時処方されていない場合は、保険適用から除外することを国に提言していくという。

 また、中長期的には、海外の保険収載の状況や市販薬の販売状況なども踏まえて、保湿剤そのものを保険適用外にすることを検討すべきと訴えている。

 健保連は企業の健康保険組合の意向を代弁する業界団体だ。数ある利害関係者のひとつで、そこが政策提言をしたからといって、すぐに国の政策に取り入れられるわけでもないし、すぐに保険適用の範囲が変わるわけでもない。

 だが、ヒルドイドの美容目的使用はそもそも違法で、それを求める女性たちや分かっていながら処方する医師には社会の厳しい目が注がれている。来年は2年に1回の診療報酬改定が行われるが、今回の健保連の政策提言がきっかけとなり、何らかの対策が講じられる可能性も否定できない。

 ヒルドイド単剤での処方を保険適用から除外することが現実のものとなれば、とばっちりを食うのは病気で薬を必要としている人たちだろう。

 アトピー性皮膚炎など皮膚の病気がある場合、保湿剤だけではなく、その他の薬も同時に処方されるのが一般的だが、なかにはヘパリン類似物質だけを処方されている人もゼロではないはずだ。だが、美容目的でのヒルドイド使用が横行したせいで、一律にヒルドイド単剤での処方だと健康保険が利かなくなると、病気で苦しんでいる人の負担が増えることになってしまう。