「ヒルドイド」を美容目的で処方してもらうのは違法だ写真はイメージです

 健康保険法 第一条

 この法律は、労働者の業務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡又は出産及びその被扶養者の疾病、負傷、死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

 国民健康保険法 第二条

 国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする。(※以上太字は筆者)

 健康保険法は会社員の医療制度について、国民健康保険はおもに自営業者やフリーランスの医療制度について定めたものだ。

 いずれも、給付の対象は「病気、ケガ、出産、死亡」で、「美容や予防」のために健康保険を使っていいとは書かれていない。

 ところが、ここ数年、ある塗り薬を化粧クリーム代わりにするために、美容目的で皮膚科を受診する女性たちが後を絶たないという。

 問題の薬は、「ヒルドイド」という皮膚に塗る外用薬だ。

美容クリーム代わりに
処方薬を求める女性たち

 ヒルドイドは、アトピー性皮膚炎やしもやけ、ケガをしたあとのケロイドの予防、打撲によるあざの治療などに用いられる外用薬だ。おもな成分は「ヘパリン類似物質」というもので、類似という言葉がつく通り、人間の体内にも備わっているヘパリンと似た働きをする物質が配合されている。

 ヘパリンは血液が固まるのを抑えたり、血栓を予防したりする働きがある。そのため、ヘパリン類似物質を塗ると皮膚の血行がよくなったり、皮膚表面の血管でできた血栓を溶解させたりする。また、構造的に水分を保つ力が強いという特徴があり、皮膚の深部にある線維芽細胞に働きかけることで、外傷によるケロイド予防にも効果を示している。