小池百合子東京都知事が希望の党の代表就任を発表し、前原誠司民進党代表が党の事実上の解党、希望の党への合流を決めた時点では、「一挙に政権交代か」というムードが生まれていた。修羅場に強い喧嘩師・小池知事(本連載第137回)のイメージもあり、小池知事の電光石火の仕掛けが出たのだと思われた。

 だが、冷静に振り返れば、小池知事が党代表に就任したのは練りに練った戦略性があったわけではない。そうしない限り安倍首相の突然の解散宣言に対して戦いようがないという、やむにやまれぬ判断だったということだ。新党の選挙準備は、全くできていなかった。側近の若狭勝氏や、民進党離党組の細野豪志氏は小池知事の眼には、全く頼りなく映っていただろう。「自分が代表にならなければ話にならない」と考えたのは自然なことだった。

 小池知事にとっては、遅々として進まない新党の準備を見れば、総選挙の時期はできる限り来年の衆院任期いっぱいに近い時期が望ましかったはずだ。党の代表も、できれば国会議員から出し、自分は五輪までは知事に専念したかったと思う。その状況を安倍首相に見透かされてしまったということだ。

 また、民進党はどうしようもない状況だった。将来有望とされた若手幹部が不倫スキャンダルに見舞われた。選挙での退潮が続き、野党共闘で共産党の影響を強く受けて党内ガバナンスが失われた状態に愛想を尽かした保守系議員の「離党ドミノ」が続いていた(第161回)。前原代表が述べたように、「このまま選挙に突入すれば、たとえ共産党と共闘しても40議席まで議席を減らすだろう」という窮地だった。そこも安倍首相に突かれてしまった。

 前原代表にとっても、希望の党との合流は、戦略性があったわけではなく、安倍首相の突然の解散に対して、頭を悩ませた挙句「これしかない」というやむにやまれぬ一手だったに違いない。

 結局、小池知事も前原代表と民進党も、全く選挙を戦えない状態だったところに、安倍首相の解散という不意打ちを食らったために、慌てて動いてしまった。筆者は、「基本政策の一致する議員のみと合流する」という小池知事の判断自体は正しかったと思っている(第168回)。

 だが、「排除の論理」という言葉が強すぎたこと、また言葉を出すタイミングが問題だったことは否めない。それは、安倍首相の不意打ちに慌てた一方で、「政権交代の実現」が一瞬チラついた高揚感が出てしまい、混乱してしまったのだろう。希望の党に公認されなかった候補者たちの阿鼻叫喚から枝野幸男氏による立憲民主党の結党という混乱も含め、これらは全て安倍首相の不意打ちの決断が引き起こした。「解散権」という絶対的な権力を持つ安倍首相の威力をあらたえて思い知らされたと認めざるを得ない。