糖尿病や高血圧、ガンの原因にもなる「座りすぎ」の恐怖(第1回、第2回参照)。その怖さを理解しつつも、つい座りすぎでしまうデスクワークの人々に、立って仕事できる環境を作ることで健康面に好影響を与えたこと、それだけではなく、仕事の生産性もアップしたことを前回お伝えした。このように、立ち上がることは脳の活性化にもつながる。そして、それは子供の学力向上につながることがわかってきた。今回は座りすぎ研究の第一人者、岡浩一朗・早稲田大学スポーツ科学学術院教授の著書『長生きしたければ座りすぎをやめなさい』から、立つことで子どもの学力もアップするメカニズムや研究結果について紹介する。
立ち上がることで脳が目覚め、向上心にスイッチが入る
座りすぎが糖尿病や高血圧、ガンを誘発していることが最新の研究で判明したことから、「病気や死を防ぐためにも座りすぎをやめるべき」という話、それに加え、「座りすぎの弊害を避けるためにできることや予防法」を『長生きしたければ座りすぎをやめなさい』では紹介しました。
そして、長時間の座りっぱなしの原因となるデスクワークの人々が、「立ち机」を導入することで座りすぎを予防したら、仕事の効率や生産性が上がったことも紹介しております。(前回記事)
そう、座りすぎをやめることは健康面以外でもメリットがあるのです。そこで今回、改めて注目したいのが、立ち上がることによる脳への刺激です。
スタンディングデスクなどの立ち机を使い始めると、短期間のうちに「夕方になっても疲れない」、「肩や腰の痛みが軽減される」など体調面が改善されることに加え、「頭が冴える」「集中力が高まる」など、脳の働きにも喜ばしい変化があらわれます。
このことは、多くの利用者が証言しています。著者が拠点とする早稲田大学・所沢キャンパスの研究室でもゼミのメンバー全員が立ち机を利用していますが、やはり立つ時間を増やすと「研究に集中でき、作業効率が上がる」と好評です。
なぜ立つだけで脳の回転がよくなるのか?
それは、立つことの運動効果にほかなりません。座った姿勢から立ち上がることは「小さな運動」で、「座る→立つ」と姿勢を変えれば、足の筋肉が必ず動きます。
その刺激が足から脳にダイレクトに伝わるのです。しかも、下半身には全身の筋肉の7割が集中していますから、単に立ち上がる程度の動きでも影響力は絶大です。ふくらはぎや太ももなど大きな足の筋肉に収縮が起こると、筋肉ポンプの働きで体じゅうの血液が勢いよくめぐり出し、リンクして、脳の血流もよくなるのです。そして、頭が冴える感覚がやってきます。
ですから、立ち机を使用するしないにかかわらず、生活の中で立ち時間を増やせば、それだけで脳を活性化でき、仕事のパフォーマンスを上げたり、考える力を伸ばして学力を上げたりすることも大いに期待できます。