赤い下着をつけたら
結果は大失敗!

 果たして赤い下着には超自然的な効果があるのか、すぐさま研究が開始され、フィリピンに駐留するアメリカ軍兵士が調査対象となった。結果は惨憺たるものだった。硬いダンガリーのコットンで織られたパンツのせいで、兵士たちはもっとも汗をかきたくない部分に汗をかき、イライラを倍増させた。そのうえ汗でひどく色落ちし、赤いパンツはいつしか黄色となり、最終的には「汚いクリーム色」になったという……。また帽子の内側に縫い付けられた赤い布も、汗をかくと顔に赤い色の汁が滴り落ちるという有様だったらしい。

 イライラを募らせてブチ切れた兵士が顔から赤い液体を滴らせながら向かってきたら、それはそれで向かうところ敵なしだとは思うが、もちろんこの研究の目的はそんなところにはなかった。「赤い下着の実験」は誰が見ても失敗に終わったのである。

 第二次大戦中に開発されていた「悪臭爆弾」の話も面白い。敵を殺したり、傷つけたりするのではなく、「辱める」という目的でつくられたものすごく臭い武器の話である。この研究は現在も続けられており、研究者たちはさまざまな臭いサンプルを持って世界各地に飛んでは、いろんな民族に同じ匂いをかがせてみるという実験を行っている。

 匂いについての感じ方は民族ごとに異なるにもかかわらず、どの民族からも悪臭不快ランキングのトップに選ばれたのが「アメリカ政府の標準的なトイレの悪臭」だったというオチには思わず吹き出してしまった。その瞬間、研究者たちが「遠い目」になっているのが目に浮かぶようだ。

 本書にはこの他にも、死体からのペニス移植、スナイパーを襲う下痢、ウジ虫を用いた傷治療、潜水艦乗組員の不眠など、興味深い研究が多数取り上げられている。

 ボケやツッコミめいた独り言を多用する愉快な文体に釣られて、楽しんで読めるだろう。その一方で、著者は死者への敬意も忘れない。兵士の安全を守るのに貢献したいと車両爆破実験のために献体された遺体に向けられる著者のまなざしは、とても優しく好感が持てる。

 なお本書の訳者は村井理子さんである。私は「考える人」Web版の連載「村井さんちの生活」の愛読者だ。思春期を目前にした男の子ふたりの子育てに奮闘するかたわら、こんな特殊ジャンルの本を訳されていたのかと思うと、それもなんだか微笑ましくて思わずくすりと笑ってしまうのである。

(HONZ  首藤淳哉)