例えば銀行は、預金を預かって国債を購入している。国債が償還されたら受け取った日銀券を預金者に渡せばいいのだから、日銀券が紙くずになっても銀行は損しないのである。したがって、銀行は日銀券が紙くず同然になるリスクを恐れず、国債を購入することができるわけだ。

 しかし、実際には他の投資家が買うので、日銀券の増発は不要だ。投資家Aは考える。「投資家Bは国債を買うだろう。なぜなら、最後は日銀が紙幣を印刷して償還することを知っているから。それならば、国債は順調に消化されるだろう。だったら自分も買おう」と。投資家Bも同じように考えるので、国債は実際には順調に消化される。そうなれば、日銀が紙幣を増発する必要はなく、平和な日々が続くことになるのである。

外貨を持つリスクより
国債を買っている方が安心

  投資家たちが合理的に考えれば、これで話は終わるのだが、実際には「遠い将来には日本の財政は破綻するだろう」と考えている投資家も多いようだ。だが、多くは「破綻するだろうが、当分は大丈夫だろう」と考えており、「とりあえず資金を当分の間だけ政府に貸して、その後のことは後日考えればいい」となる。

 財政が近々破綻する確率はゼロではないだろうが、極めて低い。その一方で、破綻に備えるためには外貨を持たなければならないとなると、外貨の値下がりリスクを抱えることになる。ならば、日本政府に貸しておく方が安心だ。

 ここで重要なことは、企業や個人と、政府の違いである。例えば銀行は、企業や個人が赤字や債務超過で貸したくないと思えば、別の企業や個人、もしくは政府に貸せばよい。しかし、政府が破産する可能性を考えた場合には、為替リスクを覚悟して外貨を持つしかない。政府が破産する時は、銀行預金も日銀券も紙くずになってしまうからである。