財務省と日本銀行が組んだ量的金融緩和=国債購入政策がまさに限界に来ている。2017年の金融政策は、日本の長期金利(10年物国債金利)のプラス0.1%をめぐる攻防が焦点になるだろう。今回はその理由を解説しよう。
量的緩和の基本的な構造
金融緩和の構造は、単に日本銀行が資金を市場に供給しているわけではない。日本銀行は市場から国債を購入して、その同額の代金を市場に供給している。資金量の供給を増やす量的緩和は、国債の購入量を増やすことでもある。
財政法第5条によって、日本銀行の財務省からの直接買入(引受)は禁止されているため、金融市場(金融機関)から間接的に購入している。結果としては一緒である。
国債および国庫短期証券の発行額は約1000兆円もある。日本銀行は現在、その約3割をも保有しており、このぺースでは2020年には4割を突破するという事態になる。
マイナス金利で金融機関の収益悪化
2016年1月に日本銀行は当座預金にマイナス金利(マイナス0.1%)を導入した。この効き目は大きく、10年物国債の金利(長期金利)もマイナスになり、さらには20年物国債の金利もマイナスになった。
金融機関への影響も大きかった。金融機関の主たる収益の源泉は、預金を原資にした貸し出しと国債の購入だが、実際には貸し出しの方の収益性は非常に低い。さらに、金融機関は主として20年国債を購入しており、20年物国債までがマイナス金利となってしまった。この経営に対するマイナスインパクトは極めて大きく、とくに貸し出しが低迷する地銀・信金などで顕著だ。
量から金利誘導へ政策転換、金融機関を救済
9月にはその問題に対応するため、日銀は10年物国債の金利(長期金利)を“0%前後”に誘導する政策を発表した。10年物国債の金利が0%になるということは、20年物国債の金利はプラスになるということであり、金融機関の収益は改善される。
国債の価格と金利の関係は、価格が上昇=金利は下落で、価格が下落=金利は上昇となる。そして、国債も金融商品であり、会計的には時価評価しなければならない。株式と一緒で、国債も価格が下がると、評価損を計上しなければならないのだ。それは300兆円を超える国債を保有する日本銀行でも同様だ。つまり、国債価格が下がる=金利が上がると、日銀にも損失が発生してくるのである。