実はファーストリテイリングの55日分という在庫は、ファッション業界の同業者と比べても多い。国内の優良競合であるしまむらは30日、グローバル競合の中でヴィクトリアシークレットを運営するL Brandsは32日、一番ユニクロにブランドイメージが近くて、ユニクロほど経営がぱっとしないGAPでも在庫回転日数は44日だから、やはりユニクロは突出して在庫が多い。この点が、経営の弱点であることに間違いはない。

 さて、小売業が在庫を圧縮して利益効率を上げようとすると問題も起きる。ファーストリテイリングが45%ほど在庫を削ると、経営効率はしまむらと同じになる。しかしそうなることで、機会損失という新しい問題を抱えることになる。

 来店した顧客が気に入った服があっても、自分に合ったサイズや、欲しい色がない。だから買わずに帰ってしまう。これが機会損失で、在庫を減らすとこのようなことが頻繁に起きるようになる。特にファッション業界では、この機会損失は大きな問題となる。一般の小売業以上に機会損失が起きやすいからだ。

 一般のスーパーであれば、ネギ、キャベツ、白菜といった単位で品切れが起きないように、仕入れ管理を行えばいい。ところがファッションの場合、同じクルーネックセーターでもサイズがSからXLまで最低で4種類、それに色が白、黒、ブラック、エンジ、カーキと5色あれば全部で20種類のSKU(ストックキーピングユニット/仕入れの管理単位)で品切れを起こさないようにしなければならない。

 しかも、実際に店舗を運営してみるとわかるが、消費者はランダムに買っていくので、店舗では常に予測ができない「歯抜け状態」で在庫がなくなっていく。だから「ああ、カーキ色のMサイズがあれば買っていくのになあ」と顧客が残念がるようなシーンが、店頭では頻繁に起きるのだ。

目玉商品の争奪戦が発生
秋冬商戦で見えた「変化」

 さて、ダイヤモンド社の主力商品(?)であるエリヤフ・ゴールドラット博士の『ザ・ゴール』シリーズに、この小売店のジレンマを扱った『ザ・クリスタルボール』という名著がある。クリスタルボールとは、未来を見通す魔法の水晶玉のことで、この本の主人公である小売店長のポールが「どの商品をどれだけ仕入れたらいいかがわかる魔法の水晶玉があれば」と願うところから、書名が付けられている。

 この作品は、利益率が地域最低レベルに落ち込んだポールの店で、さらなるアクシデントが起きて地下倉庫が水浸しになり、店頭在庫が20日分しか置けないというピンチに陥る場面から始まる。そしてポールが「在庫を大幅に減らしながら利益を上げる」方法を試行錯誤で見つけていくことで、ピンチを乗り切るという作品だ。

 興味のある方はぜひこの本を読んでいただきたいが、ポイントとしては、店頭在庫と地域倉庫、そして近隣店舗の在庫を融通し合うことで機会損失を減らしながら、在庫を圧縮することができるという話である。

 それを念頭に置いて話をユニクロに戻すと、最近面白い現象が起きている。2017年秋冬シーズンの目玉として、有名デザイナーのイネス・ド・ラ・フレサンジュ氏、クリストフ・ルメール氏の2人とユニクロがコラボした商品が、発売週に売り切れるという現象が起きているのだ。