読者は驚くかもしれないが、そこで私は即座に店頭でLサイズを購入し、同時にスマホでオンラインストアのXLサイズを購入した。価格が9990円の商品なので、ECの送料は無料である。とにかく2つ同時に確保したのだ。

 さらに、ルメールとのコラボラインでオックスフォードシャツのカーキ色がいい感じであることがわかった。ところがこちらは、Lサイズが店頭でもオンラインストアでも売り切れ。そこでアプリで調べてみたところ、新宿高島屋店には「在庫残りわずか」の表示があったので、そのまま新宿駅の南口まで移動して、Lサイズの残り少ない在庫をゲットした。

 後日、自宅に到着したイネスのXLサイズは残念ながらやや大きすぎで、結局私に合うのは、最初に店で買ったLサイズの方だとわかった。それで、通販で買ったXLサイズのほうは新宿西口店まで出向いて返品する。

 実は、ユニクロの通販は今はどの店舗でも返品ができる。そして店頭で返品すれば、返送分の送料がとられないのだ。だから2つのサイズを同時購入するという行為を気楽に行うことができたのだ。返品したXLサイズはやがてユニクロの在庫として再表示され、売り切れたはずの商品を幸運にも発見した別の誰かがゲットすることになるだろう。

 こうして私は欲しい商品を手に入れて満足したのだが、これを店の側から見るとどうだろう。実はゴールドラット博士が提唱した解決策と同じことが、ユニクロ全体で起きていることになる。

「仕組み」が機能し続ければ
総資産利益率は10%以上も向上?

 特定の店舗の店頭では品切れが起きていて、「魔法のクリスタルボール」がなければ機会損失が起きておしまいである。ところがユニクロアプリのお陰で、消費者はオンライン在庫(つまり地域倉庫の在庫と同じ)や近隣店舗の在庫を見つけて、そちらで買い物を継続してくれる。これがユニクロが手に入れた魔法のクリスタルボールの効果である。

 もし、この仕組みを消費者が学習し、他の商品でも同様の買い方をしてくれるようになったとしたら――。近い将来、ファーストリテイリングは55日分の在庫を持つ必要がなくなるかもしれない。

 また、もしそのことで、しまむら、ウォルマート、L Brands並みとなる32日程度の在庫でやり繰りできるようになったとしたら――。電卓を叩いてみると、ファーストリテイリングの総資産利益率は実に12%向上する。あくまで机上の計算ではあるが、これから先、実際にどうなるだろうか。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)