「空手道場」「書道教室」「相撲部屋見学」などのツアーを提供する「FindJPN」。各ツアーは、ウェブサイトから予約することができる。

 東日本大震災以降、激減したとされる日本国内への外国人旅行者。風評被害などの影響が、観光業界に多大な危機をもたらしていることは周知のとおりだ。

 こうしたなか、政府も観光事業の支援に乗り出している。

 たとえば、観光庁が平成24年度予算の概算要求に盛り込んだ「Fly to Japan!」事業は、全世界から1万人の外国人を日本へ招請し、SNSなどを通じて「安全・安心な観光地・日本」と「新しい日本の観光スタイル」を全世界へ発信してもらうことを目的としたものだ。旅行者はインターネットを通じて公募。旅行計画などの審査を経て、日本への往復航空券を提供するという。約11億円をかけた事業だ。

 だが、外国人旅行者を日本に呼ぶためには、まず魅力的なサービスの存在を知ってもらうことが先決となる。日本に興味を抱いた外国人が、「訪問したい」と思えるような仕掛けづくりが肝要だ。すでに外国人向けの国内ツアーサイトは数多くあるが、今まで以上の工夫や努力が求められていると言えるだろう。

 たとえば、先頃オープンした「FindJPN」(ファインド・ジャパン)は、従来とは一味違ったサービスを提供する外国人向け旅行サービスだ。「Traveling is Meeting Local」(旅することは現地のものに出会うこと)を理念としたベンチャー企業で、リーズナブルかつユニークなツアーが目を引く。

 ラインナップは、いずれも日本文化を反映したものである。「伝統文化」「ポップカルチャー」「スポーツ&アウトドア」「東京ライフ」に分類されたツアーでは、「相撲部屋見学」「日本の家庭料理教室」「空手教室」「アキバ系アイドルのパフォーマンス」など、外国人の興味をそそる内容がセレクトされている。

 とりわけ「FindJPN」のユニークな点は、ツアーサービスの提供者が個人であるケースが多いことだ。空手道場や書道塾の経営者などの他にも、一般家庭の主婦が手料理を振る舞うコースなども用意されている。いずれも数千円という低価格で提供されており、旅行者が気軽に参加しやすい設定になっている。

 『FindJPN』の場合に重視されているのは、旅行者とサービス提供者との「個」のつながりである。単に観光地を巡るツアーではなく、現地での出会いや深いコミュニケーションの実現に特化しているのである。これは従来、ありそうでなかったサービスと言えるだろう。

 複数のIT起業支援プロジェクトの対象となっていることからもうかがえるように、「FindJPN」は、ソーシャル時代の新たな旅行のあり方を示唆している。旅行者とサービス提供者とをダイレクトに結びつけることで、より細やかで充実した体験を得ることができる。その可能性を証明しようとしているのだ。

 また、日本人にとっても、外国人と触れ合う機会を多く持つことができるという利点がある。ソーシャルな旅行ツアーの増加は、むしろ私たち日本人に新たな“気づき”をもたらしてくれるのではないだろうか。

(中島 駆/5時から作家塾(R)