ファンドの投資家がファンドの会社を所有していて、ファンドは投資家のために運用されているという建て付けは、実は相互会社形式の日本の大手生命保険会社とよく似ている。だが、日本の生保の商品と経営は、ヴァンガード的なものとはほとんど真逆にかけ離れている。経営者を含めて、会社に関わる人間の「志」の違いというしかない。会社の仕組みだけが素晴らしいわけではないことが、駄目な例との対比でよく分かる。

 もちろん、ウォーレン・バフェットも素晴らしい。長期にわたる運用の好成績とバークシャー・ハザウェイ社の拡大に加えて、仕事を通じて投資の素晴らしさを人々に啓蒙している点が素晴らしい。投資のビジネスで大成功しているカール・アイカーンやレイ・ダリオ、あるいはロビンズの著作では大きなインタビューが載っていないものの、ファンドマネージャーとして成功したピーター・リンチやジョン・ネフのような人々と比較しても、総合的な影響力の点では、頭一つ以上抜けているのではないだろうか。

 筆者としては、1位と、2位については、割と自信を持って決めることができるように思うのだが、第3位はなかなか難しい。

 アンソニー・ロビンズの前掲書(特に赤い表紙の「世界のエリート投資家は何を見て動くか」の方)に、多くの大物たちへのインタビューが載っているので、興味のある読者は、是非これらを読んで考えてみてほしい。

 リターンのレコードで言うとカール・アイカーンなのかもしれないし、現在の影響力ではレイ・ダリオ(大手ヘッジファンド、ブリッジウォーター社の経営者)かもしれない。あるいは、投資家に及ぼした好影響という意味では、ディスカウントブローカー(手数料の安い証券会社)のビジネスモデルを推進したチャールズ・シュワブを評価すべきだろうか。

 筆者は、自分自身がネット証券に勤めていることもあり、チャールズ・シュワブに1票入れることにする。彼の人生と、人となりもまた大いに興味深い。

 なお、青い表紙の「世界のエリート投資家は何を考えているか」の方は、個人が投資をどう理解し、どう行うべきかについて熱く説かれている運用ノウハウ本だ。前述のように著者は、投資家や学者ではなく「コーチ」なのだが、手数料コスト(運用手数料と取引手数料の両方)の重要性が繰り返し強調されるなど、大変まじめなものになっている。

 推測するに、本書の内容が適切なものになった背景の一つに、著者のジョン・C・ボーグルへのインタビューがあったように思われる。今回は、この点からもボーグルを1番に評価したい。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)