単に知識を教えていっても
「直感」は生まれなかった

岡田 次は80年代に起きた第二次AIブームです。今までのアプローチでは、迷路や、オセロのような「トイプロブレム」(玩具の問題)しか解けないとわかり、別のアプローチが考え始められました。それが「エキスパートシステム」です。専門家(エキスパート)の知識をコンピューターに膨大に学ばせればいいんじゃないか、と考えたんですね。

夏目 それ、よさそうじゃないですか!

岡田 例えば、お医者さんがコンピューターに「もし〇〇なら、××の可能性が高い」と教え込んでいくんです。「もし熱が何度なら、この人は病気の可能性が高い」「もし咳がとまらないなら、病気の中でも風邪の可能性が高い」といった知識をどんどん教えれば、お医者さんに代わって診断ができるAIが生まれるんじゃないか、と考えたわけですね。

 しかし、これも限定的な成果に留まりました。専門家の知識は「この場合はこう」とはっきり定義できないことが多かったんです。しかも、正確に判定しようと多数のルールを教えると、互いに矛盾するルールが出てきてAIが混乱し、処理できなくなったりしました。

夏目 「お医者さんロボット」にフリーズされたら嫌だなぁ。ロボットを再起動させたりして、これじゃどっちが面倒見てるんだかわからない。

岡田 アウトプットの例もあるとわかりやすいかもしれません。例えばAIにりんごの絵を描かせたいとします。リンゴは赤いよ、丸いよ、上にヘタがあるよ、といくら教えていっても、リンゴの絵にならなかったんです。

夏目 それ、使ったコンピューターがWindowsだったからリンゴの絵を描きたくなかったんじゃ? 

岡田 確かに、Macなら一口かじったリンゴを…いやいや、描きませんよ(笑)。できなかったんです。

夏目 そんなわけで、第二次ブームが去って、今回の第三次ブームが到来したんですね?

岡田 ええ。ただし今回はブームでは終わらないと思います。「ディープラーニング」で、ついにAIは、人間と同じように「経験の蓄積」ができるようになって「直感」を持ち始めたんです。

夏目 え、コンピューターが「直感」を持つ!?

岡田 そう、それこそがAIの持つ可能性をぐっと広げたんです。次回は、AIに直感を与えた「ディープラーニング」についてご説明しましょう。