国内では、米国が大統領訪問時に日米自由貿易協定(FTA)の早期締結への圧力を掛けるのではないか、との懸念が強まっている。

 2016年に日米を含む12ヵ国で合意された環太平洋パートナーシップ(TPP)に対し、トランプ大統領は就任早々に離脱を表明、年間700億ドルにのぼる対日貿易赤字を一刻早く是正すべきだとして、新たな貿易協定の締結を望んでいるからだ。

 同大統領の「アメリカファースト」の姿勢からすれば、二国間交渉の舞台は米国が一方的な強硬姿勢で主役を演じるシナリオとなるだろう。

 保護主義を扇動してきた主席戦略官のバノン氏が更迭されるなど、現政権は当初思われていたほどに反自由貿易主義的ではない、との見方も出始めているが、通商問題を担当するロス商務長官やライトハイザ―USTR(通商代表部)代表らの顔ぶれを見る限り、貿易赤字縮小を迫る強引な手法は常に手の内に準備されていると考えていた方が現実的である。

日本とのFTA締結は
優先順位が低そうだが

 ただし、昨今のトランプ政権での通商問題の優先順位を付けるとすれば、喫緊の課題は北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉と米韓FTAの見直しであり、その次に来るのは中国との貿易収支不均衡の是正だろう。

 先月に来日したローズ米副大統領補佐官は日米間での貿易・投資に関する新ルールの早期締結が必要との認識を示していたが、実際には、日本とのFTA締結はそれほどプライオリティが高くないようにも見える。

 NAFTAに関しては、自動車関税などにおけるカナダ、メキシコ両国と米国の考え方に大きな隔たりがあり、決着の見通しが見えないままの状況が続いている。3ヵ国は年内の妥結を断念し、具体的な協議の再開を来年第1四半期に持ち越している。

 また中国との通商協議は北朝鮮への制裁強化策次第だが、誤解を恐れずに言えば、今回のトランプ大統領のアジア歴訪の最大の山場は習近平総書記との対北朝鮮対応の協議であり、貿易不均衡や知的財産権などの経済問題は副次的な位置付けに止まるだろう。