この生産技術とプロセスが機能するようになると、EVなどを海外生産する準備が大幅に効率化されるという。中でも2018年からEV導入が義務づけられる中国に関しては、早期の生産体制確立が急務だ。中国政府が策定を進めている新エネルギー車生産義務規定から判断すると、ホンダは年間2万台程度のEVまたはPHEVを中国で生産する必要がある。複数のEVモデルが設定される実情を配慮すれば、日本で電動車の生産技術を確立し、多品種少量生産をフレキシブルに行える体制を整えなければならない。

狭山市の税収が大幅減か
不安の声もある「寄居集約」

 こうした前向きな生産体制充実のテーマがある一方、記者会見で八郷社長は「販売情勢の変化の影響が大きく、国内販売も輸出も、想定したほど伸びなかった」と語った。狭山工場は21年度中に車両生産を寄居に移管するが、その後の工場設備および敷地の利用についてはまだ正式に発表されていない。工場が閉鎖され従業員が寄居に吸収された場合、狭山市の税収は大幅に減る。小谷野剛狭山視聴は「大きな衝撃だ」と発表した。ホンダは約4600人の狭山工場の従業員を約35km離れた寄居町に配置転換し、「すべての雇用を維持する」と発表しているが、従業員の生活基盤が狭山市に残るかどうか、現状でははっきりしていない。

 狭山工場は、東京オリンピックが開催された1964年、ホンダの4輪事業進出を機に建設した工場であり、ホンダの歴史とともに歩んできた。現在はステップワゴン、オデッセイ、エンジンなどを生産している。

 もっとも、世界を見渡すと、自動車車両工場のスクラップ・アンド・ビルドは珍しくない。自動車産業の歴史が長い欧米においては“工場の移転で街が消える”という例はいくつもあった。そういえば今年、オーストラリアから自動車生産工場がすべてなくなった。

 日本において大規模な車両工場の閉鎖は、日産の座間工場(1995年閉鎖)と村山工場(2004年閉鎖)だけである。海外では、ホンダの今回の発表は冷静に報道されている。

(報告/牧野茂雄、まとめ/CAR and DRIVER編集部)