――セントラルキッチンを持たないことは非効率ではないですか。

 手作りの属人的な仕事を残しておきたいのです。商品の質がブレることはあり得ますよ。粉と水と塩だけで麺を作るのに、地域によって水の質が違いますから。ただ、教育・訓練や設備投資で、ブレ幅を顧客のストライクゾーン内に収めることはできます。教育コストや、軟水器などの設備投資もカネが掛かりますが、われわれはあえて遠回りの道を選んでやっているのです。

 店での製麺は、現場にも会社にも負担が大きい。だから、「われわれはこれで店に足を運んでもらうんだ」という理念をしっかり持ち続けないと成立しない業態だと私は考えていて、理念を社員と共有できたからこそ国内で800店近くまで展開できたのだと実感しています。

――なぜ、うどんだったのですか。

 香川県丸亀市の小さな製麺所を見たときの感動が原点です。県外から多くの車が押し寄せ、長蛇の列を成している。お茶わんにうどんを入れてもらい、しょうゆをかけて食べるだけですよ。ここに消費者の求める繁盛の極意があると感じたのです。

 当時、私は焼き鳥チェーンをやっていて、顧客に足を運んでもらおうと一生懸命でした。顧客が並ぶほど感動するポイントはどこなのかと客観的に考えました。やはり、その場で出来立ての麺を食べたという感動体験ですよね。それが製麺所を繁盛店に押し上げ、本業の飲食店が負けているわけですよ。

 だから、出来立てという原点に立ち返ってうどんを提供したらはやるのではないかという仮説を基に作ったのが丸亀製麺の1号店で、ばっちり繁盛したのです。感動をどう再現するかが、繁盛の極意だと思っています。

――豚屋とん一など別業態でもライブ感を意識した手法は使えると。

 そう思います。例えば商店街のコロッケ店にも行列ができます。揚げたての匂いで人の五感に訴求します。ところがチェーン店は、「個人店だからできること」と再現に懐疑的で、システム化を優先し、その過程で感動が消えていってしまう。