「それ、もしかして歯が原因じゃなくて、神経からくる痛みなんじゃないか」

 夫の耕三さん(仮名・52歳)から指摘され、ペインクリニックに飛んで行った。

 頸部のレントゲンを撮ったが「異常なし」。

 帯状疱疹後疼痛かもしれないとのことで血液検査もしてもらったが、決め手になる結果は得られないまま、週一回のペースで首に神経ブロック注射をしてもらう治療を開始した。

 それから半年、残念ながら効果は実感できなかった。その間、強弱の波こそあれ消えることのない鈍痛は、明るく、溌剌としていた知香子さんから生気を奪い、うつ状態に陥れてしまった。

「ね、今度は大学病院を受診してみないか。ほら、対象疾患の症状に『抜歯をした後、血が止まらない、あるいは痛みがなくならない』『治療しても歯の痛みがなくならない』っていうのがあるよ。君の症状もわかるかもしれないよ」

 耕三さんが、インターネットで慶應大学医学部の歯科・口腔外科学教室のホームページを見つけ受診を勧めてくれたのは、痛みを感じて歯科クリニックを受診してから1年近くも経った頃だった。

こめかみを押すと
「ないはずの歯」に激痛が走った

「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)ですね」

 知香子さんを診察した和嶋浩一医師はそう診断した。和嶋医師は、日本口腔顔面痛学会・元理事長であり、この疾患のスペシャリストだ。