東日本大震災の被災地を回りながら、住まいについて考えさせられた。被災者が暮らす各地の仮設住宅はなぜ、同じ方向を向いた平行配置なのだろうか。
6戸や8戸の長屋は、いくつもの蒲鉾を置いたように整然と並んでいる。軍隊の兵舎を思わせる単調な作りである。生活を営むという雰囲気ではない。
Photo by Sumikazu Asakawa
なぜか。入居者が玄関を出ると向かいの棟の裏側だからだ。声を掛けようにも姿が見えない。もし、玄関が向かい合わせだったら、入居者たちの日々の付き合い方はもっと深まるだろうに、と仮設住宅を目の前にしてまず思った。玄関先に向かいの玄関があれば、立ち話が井戸端会議に発展する可能性がある。
長屋棟の間に大きめのテーブルを持ち込み、周りに椅子やベンチを置きやすい。そこへ近隣者が集い、会話が弾めば交流が進むだろう。互いの住まいに行き来が起こり、助け合うという気にもなる。
「孤独感をなくそう」と遠くからボランティア団体がやってきて、仮設住宅の一角でイベントを開くことが多い。だが、棟の位置を変えるだけで、居者同士の付き合いが自然に始まるはずだ。