
「最近、親が妙に怒りっぽい」「話しかけても、なぜか落ち着きがない」…それは認知症とともに現れる“アジテーション”という症状かもしれない。あまり聞き慣れない言葉だが、そのまま放置すれば本人と家族のストレスが増大するリスクもあるという。専門医の解説をもとに、その症状と対処法について紹介する。(清談社 真島加代)
焦燥感、怒りっぽさも
認知症の症状!?
アルツハイマー型認知症と聞くと「物忘れ」や「時間や場所がわからなくなる」などの症状をイメージする人が多いかもしれない。じつはそのほかにも徘徊や妄想、怒りっぽさなど、行動・心理面の変化も見られる。
「アルツハイマー型認知症(※)の方にあらわれる行動・心理症状を『BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略)』と呼びます。そのうち、イライラや攻撃的な言動が見られる症状を『アジテーション』と表現することもあるんです」
(※)…以下、認知症。本稿では特筆ない限りアルツハイマー型認知症を指す。
こう説明するのは、浅香山病院で認知症疾患医療センター長を務める繁信和恵氏。
「アジテーションはうつ病などの精神疾患の方にもあらわれるので、認知症特有の症状ではありません。また、認知症を発症する前段階のMCI(軽度認知機能障害)でも攻撃性や焦燥感などが出ることもあるので、認知症の進行度とアジテーションの関連性は薄いと考えられます。ただ、同じ症状でも認知症の進行度によってアジテーションの“症状の質”が異なるんです」
MCIの段階ならば、なぜイライラしているのか、どんなことに不安を感じているのかを言葉で伝えられる。しかし、認知症が進行すると自分の気持ちや体の状態を言葉にしにくくなるという。
「よくあるのが、便秘や皮膚のかゆみ、耳あかの詰まりなどの不快感を家族や周りの人に伝えられずに怒り出してしまうパターン。認知症が進行して認知機能が低下したため、自分の体の状態や不快感を言い表せなくなるんです。両親や身近な高齢者の言動が気になったら、専門医チームが作成した『BPSD出現予測マップ』を確認してみてください」