世界中からお金を集める
村上:上場する意味って世界中の人からお金を募れるってことじゃないですか。世界中の人にアピールしないレベルの会社にしかなり得ないんだったらもったいないですよ。上場するためにせっかくIR部門を作って、管理コストを払ってやってるんやから。上場って世界中の人と対話するチャンスを得る機会でしょ。資本市場の最大の公益ってグローバルアクセス。上場するのって一般的には初めてグローバルアクセスを持つ場。純ドメスティックの会社でもその点ではグローバルになってるわけですからね。
朝倉:事業を海外の市場で展開するというのは非常に難しいことではあるけれど、お金を集めるのであればもう少し難易度が低い。決算説明会の資料を英語で作ってない企業って、上場のメリットを十分には活かしきれていないということなんかな?
村上:その部分では、残念ながらまったく活かしきれていないんでしょうね。
資金調達に加えて上場後の変化という意味で言うと、CSR(企業の社会的責任)的な部分も変化しますね。上場審査を経て、グローバルからお金を集めてパブリックな社会の公器になる。そういうことを期待されるっていう立場に自分の身をおくことで自他共にちゃんとせなあかん、社会に還元せなあかん、立派な会社の仲間入りをするわけです。それって社会的に責任を負うわけだから、それも上場する意義なのかなって。とにかく上場の意義がなんなのか、創業者やVCがマネタイズするという以外の側面も、より積極的に活かしていくべきでしょうね。
兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。
村上 誠典 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。
小林 賢治 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科美学藝術学にて「西洋音楽における演奏」を研究。在学中にオーケストラを創設し、自らもフルート奏者として活動。卒業後、株式会社コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、取締役・執行役員としてソーシャルゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなど、事業部門からコーポレートまで幅広い領域を統括する。
*次回【ポストIPについて Vol.10】株主総会はなぜ被害者集会化するのか に続きます。
*本記事は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアンのオウンドメディア「Signifiant Style」で2017年9月22日に掲載された内容です。