福島の原発事故は早急な解決が求められる問題であり、国のエネルギー政策もまた速やかに方向性が定められるべき課題である。その中にあって、先日発足した「みんなのエネルギー・環境会議(MEEC)」は、あえて短期的な問題解決ではなく、時間をかけた対話を活動理念に掲げている。今回は発起人の一人である環境ジャーナリストの枝廣淳子氏に、一般市民がエネルギー政策に影響を与えられる、新しい仕組みづくりについて語る。

エネルギー政策の
決定プロセスを変えていく

えだひろ・じゅんこ
1962年、京都府生まれ。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。2年間の米国生活をきっかけに29才から英語の勉強をはじめ、同時通訳者・翻訳者・環境ジャーナリストとなる。環境問題に関する講演、執筆、翻訳等の活動を通じて「伝えること、つなげること」でうねりを広げつつ、行動変容と広げるしくみづくりを研究。地球環境の現状や世界・日本各地の新しい動き、環境問題に関する考え方や知見を環境メールニュースで広く提供している。幸せ経済社会研究所所長、NGOジャパン・フォー・サステナビリティ代表、有限会社イーズ代表取締役、有限会社チェンジ・エージェント会長、東京大学人工物工学研究センター客員研究員、1,000,000人のキャンドルナイト呼びかけ人代表、みんなのエネルギー・環境会議発起人。

 エネルギー問題には、原子力、火力、風力、太陽光、天然ガスなどの中からどのエネルギー源を選んでいくかという「コンテンツ」の問題と、日本のエネルギー政策をどのように決めていくかという「プロセス」の問題の二つがあると私は考えています。MEECの主要な役割は、原発か自然発電かといったコンテンツの方向性を提案していくことではなく、エネルギー政策の決定プロセスを変えていく点にある。それがMEECの発起人のひとりとしての私の思いです。

 これまでの日本のエネルギー政策は、主には経産省と電力業界のコンセンサスのもとで進められてきました。そこに国民が口を挟む余地はなく、国民自身もそれを強く求めてはきませんでした。しかし、3月11日の震災と未曾有の原発事故を経験し、どのようなエネルギー政策を選択すべきかを、国民の一人ひとりが考えなければならなくなりました。そこで、エネルギー政策の決定過程に私たちはどう関わることができるのか。そのひとつのモデルを作っていく場にMEECをしていきたいと私は考えています。

 そのモデル作りには、おおよそ二方向のアプローチが考えられます。ひとつは、MEECの議論の場に、様々な立場の人々を招いて、幅広い対話を重ねていくことです。「様々な立場」には、政治家、企業に属する社員、あるいは学生や母親といった属性だけではなく、原発に反対する人、原発を推進すべきだと考える人、などといった意見の違いも含まれます。